実は、抗がん剤は効く、とお医者さんなどが言うのは、これらの例外のがんがあるからいかんのです。抗がん剤で治ったというのがすべてのがんにもあてはまると思われているのです。
いいですか、子宮、直腸、精嚢、前立腺は人体のなかで端っこにあるんだ。お乳と甲状腺、内臓が収まっている部位にあるのではなく、外に出ているでしょ。この6つのがんは早めに手術をしたら10人中7、8人は無罪放免。抗がん剤も僕の薬もいらないんです。ただ10人中2、3は手術が手遅れでがんが肺か肝臓に転移してくる。これはいけない。肺や肝臓のがんといっしょになります。早めに手術して転移していないと助かります。つまり、乳がん、子宮がん、直腸がんが抗がん剤や手術で治った、おっちゃんやおばちゃんがそこらをうろうろ歩いているから、自分のがんも抗がん剤で治るんじゃないかと思うんです。これは違うんです。それを知ってもらいたい。
次は表の2番。抗がん剤、骨髄移植、放射線療法で治癒、長期延命のがん。主に白血病ですね。うちの息子も今だったら骨髄移植で助かっているんです。当時は骨髄移植がなかった。喉のがんは、今、抗がん剤で寿命を全うする人が10人中7、8人います。しかし、2、3人は苦しんでダメになる。抗がん剤を使ってダメだったら、苦しむのがいやならうちに来なさい。保険が効いて、苦しんでもいいならやりなさいと。これらは例外です。
次に表の4番。抗がん剤を使用しても短期的しか延命しないがん。この表は国際がん学会のちゃんとして分類です。僕、今、ここ6年間の2500人のがん患者の治療の資料を海外のエビデンスのあるちゃんとしてがんの医学雑誌に発表します。もうすぐ出ます。そこにもこの表は出てます。国際がん学会の統計ですから。しかし、日本のお医者さん、これを考えずに抗がん剤をやるんです。
4番のがんは絶対にアウト。ただ、胃がんと肺がんは手術して全部取りきれていて、リンパ腺にもどこにも転移していなかったら大丈夫です。リンパ腺にひとつでも転移していたら余命はだいたい1年半か3年です。2年生きている生存率は世界で5%。それ以外はダメです。
問題は3番です。乳がん、卵巣がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、甲状腺がん。
乳がんを手術して3年くらいで再発すると、肺か肝臓に転移します。放っておいたら1年で死にます。抗がん剤をやると1年半から2年は生きる。半年か1年延命するんです。しかし、卵巣がんは生きるんです。卵巣がんを手術して切る。その後、肺か肝臓に転移する。放っておいたら1年で死ぬ。抗がん剤を使うと4年くらいまで生きるんです。結果は苦しんで死にますが、4年延命できます。婦人科のお医者さんはこの卵巣がんで味をしめているから、子宮がんの治らないがんにも、ばかばか抗がん剤をやるんです。
胃がんは今、手術をして再発すると、放って置いたら1年で死にます。抗がん剤をやると1年10ヵ月生きます。大腸がんは手術して再発したら、放っておくと1年で死ぬ。抗がん剤とやると1年半生きる。だいたい半年から1年生きるわけです。この再発に関しては、良心的なお医者さん、抗がん剤にたじろぐお医者さんでも、これは延命効果が半年から1年あるものだから、抗がん剤をばかばかやるわけだ。私は違うよ。うちにいろんな医者がいる。だいたいは抗がん剤を使わないけれど、これには使うやつがいるんだ。使いたくてうずうずしているのがいるんだ。
それでいつも私とけんかしているんです。おまえな、俺がもしも乳がん肺転移だとるす。丹羽先生もいないとする。抗がん剤をやって1年半か2年、ゲーコラゲーコラしてうまいものもろくに食べられなくて苦しんで1年半後に死ぬんだったら、俺はうまいものを食べてニコニコしながら1年で死ぬほうを選ぶと。たった半年か1年の違いだ。10年生きるんだったらやるけど。
次に5.これは絶対にだめ。特に胆のうがん、膵臓がん、胆管がん、世界で5年生きている人はいないんです。膵臓がん、だいたい平均半年から10ヵ月。胆のうがん10ヵ月から1年半で全員死ぬ。うちに入院してくる患者さん、かなり良くはなるけど、こいつだけは10人来ると7、8人はダダダーッと悪くなる。患者さんが大学病院に入院するでしょ。「先生、うちの父ちゃんは新しい抗がん剤で助かりますか?」と聞くと、お医者さんは何をいうかというと「やってみなければ分からない。10%の確率です」という。家族は助かって欲しいんです。ワラにもすがる気持ちなんです。やってみないと分からないと言われたら、みんなやるんです。そしてみんな苦しんで死ぬんです。どうせ死ぬなら、せめて苦しまずに死なせてあげればいいのに、何ぼ言っても分からないんです。
膵臓がんは最近、医者も余命3ヶ月、半年と言い始めました。しかし、それを告知する。だから患者もなんとかしたくて抗がん剤をやるんだ。もういいかげんにしてほしい。
医者が患者さん家族を説得するのに、縮小効果を掲げるわけです。今、製薬会社が作る新しい抗がん剤の許可の基準。これがすでにおかしいんです。いいますよ。まず、製薬会社が新しい抗がん剤を作ってきた。それを認可してもらうために厚生労働省に持ってくる。そうすると厚生労働省はそれを80箇所くれいの医大にばらまいて治験を依頼するんです。動物実験で安全が確認されても、人間が3日使って死ぬかも分からないものですよ。契約書に死んでも文句言いませんというのを書かされ、治験するんです。要するに人間モルモットです。その新しい抗がん剤を使い始めて4週間以内にCT、レントゲンでがんが使う前と比べて2分の1以下に縮小したら採用なんです。5週間目にその患者さんのがんが大きくなろうと、患者さんが死のうと関係ないんです。
あんた、4週間以内でがんの大きさが2分の1、こんなもの猫いらずを飲ませたって青酸カリを飲ませたって小さくなりますよ。患者さん5週間目に死にますよ。死んだって採用、そんなあほな薬がどこにありますか。
もうひとつ、皆さんショックな話。私はいまから60年くらい前に京大の医学部に入りました。ペーペーで医学のことは何も知らないんですよね。薬理学の教科書に何十という抗がん剤が歴史的に古い順にダーッと出ているんです。その一番上、抗がん剤第一号。ナイトロジェンマスタードと書いてあるんです。私はこの名前、どっかで聞いたことがるぞと。なんで聞いたことがあるんだろうと。その疑問は分からずに30年後。論文を書くために海外のいろいろな資料を読んでいたら、抗がん剤第一号発見の事実が出てきたんです。
それは第2次世界大戦中にさかのぼるんです。ドイツ、イタリア、日本が一緒になってアメリカ、ロシア、フランス、イギリスと大戦争をしました。当時、私は小学生だった。日本兵は強かった。とくに一対一の白兵戦。外人はそういう突撃に弱い。道具を使って身体は使わないのがいいわけだ。そこで流行ったのが毒ガスなんです。
アメリカ軍とドイツ軍は毒ガスのぶつけ合いをしたんです。アメリカ政府は国をあげて毒ガス研究をしました。当時エール大学のギルマンという教授を班長にして国家予算で毒ガスの研究を始めました。このギルマン教授というのはがんの研究者だったんです。だから、研究所に悪性のリンパ腫のマウスをいっぱい飼っていた。ある日、ギルマン教授がマウスを見たら、悪性リンパ腫の腫れが引いていた。おかしいなと調べてみたら、毒ガス研究所の毒ガスが下水管を通ってマウスのところに流れていたんです。それを見たギルマン教授は、がんには毒ガスだ!と発見したのが抗がん剤第一号のナイトロジェンマスタード。この名前を何で僕が知っていたかというと、戦争中、僕らは国語の時間は国語が半分。あとは大本営発表という戦況報告の新聞を読まされていたんです。その新聞の横の方にいつもアメリカの航空隊がドイツの戦車隊にナイトロジェンマスタードをぶつけた!という見出しがでていた。それが頭に入っていたんですね。それで、あ、あのときのナイトロジェンマスタードだと。
それだけでは終わらなかった。去年、土佐清水の病院に帰ったとき、あまりにも抗がん剤の悪口ばかり言っているからと思って「今日の治療方針」という薬を集約した、分厚い本の抗がん剤のところを開いてみたんです。そしたら今でも出ていました。一番初めに。ナイトロジェンマスタード。アメリカで使われている悪性リンパ腫の特効薬と。毒ガスですよ。そりゃ苦しんで死ぬのが当たり前です。
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