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若年層のがん多発は
環境汚染が大きな原因

 
いつも私の診察のときにお話していることですが、きょうはがんに絞ってお話します。
   僕が、医者になった若い頃、新生児肺炎から年寄りの肺炎、みんな亡くなりました。社会面の端っこに有名人の訃報が載っています。僕はいつもそこに注目していました。なぜかいうと、病名を知りたかったからです。昔は80パーセントが肺炎でした。最近、肺炎は10%くらいしかなく、ほとんどが、がん、心筋梗塞です。これは、昔はいい抗生剤がなかったからです。最近これらの病気はみんな助かります。
   僕が医者になった頃は、がんといえば60歳以上。30代、40代の肺がん胃がん、肝臓がんはひとりもいなかった。ところが10年20年たつうちに30代、40代の腎臓がん、肺がん、膵臓がん、胆のうがんなどがボコボコ出始めた。
   人間は60歳を越すと体がボロボロになってくる。それは体のいちばん大事な遺伝子のところのDNAが崩れてくるからです。DNAが突然変化を起こしてがん化するのが、がんのすべてだったんです。
   そうして今、若い人のがんが増えたかというと、40年前、1970年代から、環境汚染がどんどん悪くなり、環境汚染物質が出す毒性の活性酸素が体の中に入ってきて、核の遺伝子を外から傷つけるようになったんです。今までは老化で細胞の遺伝子が壊れてがんになっていたのが、外から細胞の遺伝子を傷つけだした。人工的に細胞の核のDNAの遺伝子が変化してがんになり始めたのです。
   同時に、自動車の排気ガスや重油、石油を焚く工場のばい煙などによる環境汚染から出る活性酸素。オゾン層が破壊され、従来の何十倍もの強い紫外線が降り注ぎ、活性酸素を増やしている。それらが体の中に入ってきて細胞の中の核の遺伝子を傷つけてがんにし、リンパ球を傷つけて膠原病が悪化し、皮膚の表面の各層の保湿機能を奪ってアトピー患者を増やしてのです。アトピーなどは昔は小学校に行くまでにみんな治っていたのに、70年代以降は、大人の重症の全身型が出始めました。元凶はすべて環境汚染であります。その環境汚染が出すいちばんの毒性は活性酸素。これがすべてに関係しているのです。ということを僕は40〜50年前から論文にし、学会で発表したりしているわけです。それの一端についてお話しながら、がんについてお話します。
   合戦酸素は体内に入ってきたカビやばい菌をやっつけて身体を守ってくれるのはいいけれど、できすぎると人間の身体を攻撃してがん、膠原病、アトピーをどんどん作り出します。

   左のグラフ(図1)がうちに来るアトピー患者さんの地域別数です。もうなにをやっても治らないといって全国からやってくる重傷のアトピー患者さんの多い地域の表です。下のグラフは自動車の排気ガスや工場のばい煙から出る窒素酸化物の大気中濃度を地域別に表したものです。うちの入院患者数を重ねると、見事に一致するんです。東京大阪はとにかく人口も車の量も何千万とあって、窒素酸化物、活性酸素をばんばん出すわけですね。名古屋と福岡はどうして多いかというと、福岡と北九州、これは明治時代から北九州工業地帯といいまして、日本最大の製鉄工場が乱立しています。

35年前までは筑豊炭田、三池炭鉱の石炭を炊いていましたが、石炭がとれなくなって炭鉱が閉山してみんな重油に転換した。それで重油を焚く製鉄工場の煙突から排出される窒素酸化物、自動車の出す窒素酸化物で大気中の窒素酸化物の量が日本で4位。うちに入院してきた患者さんの数もこれも見事に一致して4位なんです。
   それから名古屋、岡山。名古屋は今でも重症アトピーが治りにくい最重症地区です。治りかけてもすぐ戻る、反復を繰り返す地区です。名古屋と岡山。おもしろいのは、息子が小学校6年のとき、前年の中学入試問題集に一流中学3校が同じ問題を出していた。それが「岡山と名古屋に共通した工場地帯を書け」。僕は、中学入試にでるくらい、この工場地帯のことは有名なんだと思いました。
   それは、石油化学コンビナートです。日本最大の石油化学コンビナートは四日市で、次が岡山の水島。四日市は中京工業地帯。名古屋の隣だ。そこで重油を焚くから窒素化合物出て、活性酸素をドンドン出すわけです。それから名古屋の東は世界最大の自動車工場、トヨタがある。これが自動車の排気ガスをだして、活性酸素を出す。
   岡山は瀬戸内海に水島石油化学コンビナート。西の端に日本最大の製鉄工場、日本鋼管がある。これは昔石炭を炊いていたけど、今は全部重油を炊いている。この2地域からうちに入院すてきた患者さん3位から5位、ちょうど一致するんですね。
   このように環境汚染とアトピーは非常に関係しているということです。

 

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