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 レポート 067


前立腺がん
−手術は正しいのか否か?−
 
   男性がんの手術は正しいのか否か、前立腺がんの場合は
 
   がん統計白書によると、10年後に多いがんの予測順位は、1位「肺がん」、2位「胃がん」、3位「前立腺がん」となっています。なかでも前立腺がんは'00年比の倍、総患者数は7万8千人にものぼると予測されています。
   前立腺というのは男性にだけあり、精液の一部を作る臓器です。この前立腺にできるがんが前立腺がんといい、年をとることで多くなるがんの代表と言われています。高齢化社会の到来と同時に増加するのは当然と言えば当然の事なのかもしれません。男性にとっては気になるがんといえます。
   症状は、尿が出にくい、尿の回数が多い、排尿後の残尿感がある、夜間の多尿、尿意切迫(尿意を感じるとトイレに行くまでに我慢できない)、下腹部不快感などです。検査の結果、前立腺がんと診断されても、転移がない場合の症状は、前立腺肥大とほとんど変わらないとか。がんの中では比較的おとなしい部類なのです。
   ですから、早期発見などでみつかったがんを過剰に治療しなくても、放っておいても寿命に関係ない場合が多いそうです。しかし、このがんを手術などで摘出したり、放射線照射で消滅させたりすると、副作用で尿失禁や性機能障害になります。
   今回、高齢化社会到来とともに増加するとされるこの前立腺がんについて、丹羽先生にお話を伺いました。
 
   手術をすると一生おむつ生活
 
―――前立腺がんですが、最近、身近なところでよく聞くようになったのですが、手術すると大変なことになるとか?
「そうです。今は、内視鏡手術などが発達し、手術に負担がかからなくなった。また精密な手術も可能になった。だから手術で取り除いたほうがいいがんも増えました。私は、常日頃、普通のがんの場合、抗がん剤治療なんていうバカな事はやめろ、手術で取りきれるという条件のもとでなら手術をしたほうがいい、と言っています。なぜ取りきれるという条件かというと、がん細胞というのは、一部だけ切り取って、残りを傷つけたままで残しておくと、爆発して四方八方に散るのです。例えば胃がんが肝臓にへばりついているがん。これは取っても取りきれない。なぜなら肝臓という臓器は一部だけ切り取ることができないからです。切ったら出血多量で死に至る。そうなると、開腹手術しても開けただけですぐに閉じることになります。肝臓に限らず、とにかく取りきれないのなら取らないで開腹のみというのは医学界の常識です。よく、取りきれないで一部のがんを残して抗がん剤治療を率先してやる医者がいますが、これは言語道断。とんでもないことです。
   婦人科のがんなどは、お産のときに開腹してから卵巣がんが見つかることがある。見つけた医者、爆発してはいけないと思って取ろうとする。しかし、婦人科系のがんはものすごくやわらかいから、取ろうと思って引っ張り上げたら、ほんの少しでも破れることがあるんです。そうすると腹膜の中にがん細胞が一気に飛び散ってしまう。これを腹膜播種という。だから、がんを取るときはよほど気をつけないといけないんです。取りきれないものを残してはいけない。ましてや残して抗がん剤なんてもってのほかです。
   ところがこの常識の例外がいくつかあります。そのひとつが前立腺がんと食道がん。いまだに手術でどんどん取る医者がいるけれど、基本は取らないです。
   まず、前立腺がんを手術で切ると、おしっこが自力で出せなくなる。そうすると垂れ流しになり、おむつ生活になってしまう。後がやっかいなんですね。だから普通、手術はしない。また、食道がんは、手術で切除してしまうと、一生、人工喉頭をつけなければいけなくなり、話すことが不自由になります。
   いつも言っているように私は、抗がん剤は完治するのなら使うけど、ほとんどが苦しんで死ぬだけだから使わない。
   ところが、食道がんは今、抗がん剤と放射線で治るがんです。だから切ってはいけないんです」
 
   前立腺がんは手術せずホルモン療法と丹羽療法で安定
 
―――前立腺がんは手術をしないでどんな治療をするのでしょうか?
「ホルモン剤治療です。男性ホルモンを押さえるホルモン剤があって、この治療をすると20人中19人はいい状態になります。それと前立腺がんはほかのがんと違い、直接、死に至ることが少ないんです。治りきることもないけれど、ホルモン剤を打って抑えていれば長生きもできるのです」
 
―――転移なども少ないのでしょうか?
「少ないですね。何百人にひとりだけど、肺か骨に転移するという、非常に特徴的な転移をします。骨の場合、前立腺と腰の骨の位置が近い事から、よく、腰が痛くなり、腰痛と間違えられてしまう。ちゃんとレントゲンを撮ると、骨のがんになっていたということがあります。骨のがんの大元はどこかなと調べると前立腺にがんだったということがあります。悪性だとそれくらいすぐに骨に転移します。前立腺がんは案外自覚症状がないから分かりにくい。
   しかし、骨のがんくらいでは、痛いけど死なないです。死に至るのは肺に転移したがんですね。でも、それは非常に少ない。だからこのがんは普通のがんよりも長生きできるんです」
 
   男性は50歳を越えたら前立腺がんの検査を
 
「とにかく前立腺がんにかかると、男性ホルモンの働きを抑えるために女性ホルモンを投与されるんです。そうすると性欲がなくなる。でも、4年間はホルモン治療が効いて、手術をしなくても生きていけるんです。そして私の薬を併用していけばだいたい5年から10年は大丈夫です。4年でホルモン治療が効かなくなることはないです」
 
―――発見する方法は?
「いちばんいいのはまずPSAというマーカーがあるので、その検査をすることです。乳がんや卵巣がん、肺がんなどの普通のマーカーの該当確率は90パーセントくらいなんです。残りの10パーセントくらいは実際のがんとマーカーが相関しない。ところがPSAだけは100パーセント一致するんです。だから、検査でこのマーカーの数値が悪かったら間違いなく前立腺がんです。
   もうひとつ、人間とがんが共存して生きるのがこのがん。PSAマーカーが高くて、実際にがんがあっても、何も治療をしなくても生きている人もたくさんいる。このれも他のがんに見られない前立腺がんの特徴です」
 
―――では、がんになっていることに気付かないこともあるということですよね?
「あります。多いですね。だから尿意が近い、尿を失禁すると言う人は絶対に検査をしたほうがいいです」
 
―――よくある健康診断でPSA検査は組み込まれているのでしょうか?
「ないんです。これだけ前立腺がんが増えてきているのだから絶対にやるべきでしょう。子宮がん、乳がん検診と同じように男性も50歳を過ぎたら検査を絶対にやったほうがいい。血液検査で済むのですから」
 
―――SODは効果あるのでしょうか?
「もちろんあります。発がん原因の活性酸素を抑えるのだから、そりゃ飲まないよりは飲んだ方がいい。これは前立腺がんに限らずすべてのがんに同じ事が言えます」
 
※注1 PSA検査
前立腺がんを発見するきっかけとなるひとつの指標。値が血液1mlあたり4〜10ng/mlがグレーゾーンと言われており、その場合には20〜30%にがんが発見されます。PSA値が10ng/mlを越えると50〜80%にがんが発見されます。
100ng/mlを越える場合には前立腺がんが強く疑われ、さらには転移も疑われます。この検査は前立腺がん検査としては最も有用と考えられています。 (前立腺がん診療ガイドライン 泌尿器科学会編)

 
※この記事はレポート014のアンコールレポートです。
 

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