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『どうせ死ぬなら「がん」がいい』 〜日本人よ、医者と医療を信用するな〜
中村仁一・近藤 誠 対談

 

 
   今回は、以前にも紹介したきた二人の先生、『患者よ、がんと闘うな』『医者に殺されない47の心得』などの著書でおなじみの、慶応大学医学部講師の近藤 誠先生、そして『大往生したけりゃ医療とかかわるな』でおなじみの中村仁一先生が対談された『どうせ死ぬのなら「がん」がいい』(宝島社新書)を紹介します。
   お二人がこれまで出版されてきた著書はいずれもベストセラーとなり、大変な反響を呼びました。そして、日本の西洋医療における「がん」治療の矛盾点、疑問点、間違い等が広く知られることになりました。先生方が著書の中で書かれている、抗がん剤の効果は縮小効果であって延命効果ではない。抗がん剤はそもそも猛毒である。がんで死ぬのではなく、抗がん剤治療で苦しんで死ぬ。といった内容は、丹羽先生もずっと言い続けてきたことです。この本でも、がん=手術、放射線、抗がん剤治療、といった西洋医療の限界がはっきりと語られています。そもそも「がん」とはなんなのか、にまでさかのぼり、私たちが抱いている「がん」というものの概念を覆してくれます。そんな近藤先生と中村先生の対談は、まさにタイムリー、待ち望んでいたものでした。
 
   がんは末期発見、治療断念放置がいちばんいい
 
   『どうせ死ぬなら「がん」がいい』本書は、大きく三章に分かれ、一章は、がんの誤解を解く。二章は、医療に殺される。三章は、日本人と死、となっています。
   その一章、がんの誤解を解く。
   西洋医療の発展と共にがんのメカニズムが研究され、それに対する抗がん剤が次々開発されてきました。また、放射線や最近では重粒子線、陽子線治療といった最先端医療が注目されています。しかし、この本では、がんの9割は末期発見・治療断念∞放置≠ェ一番だと教えてくれています。その理由も明快に書かれています。まずは丹羽先生も言い続けている抗がん剤のこと。対談の中でも「抗がん剤治療を認可するときの有効≠ニいう判断はがんのしこりが一定程度小さくなる≠オかもそれが4週間続く患者が2割いたら認可される。残りの8割は縮小効果すらなくても認可されてしまう。医者が効く≠ニいうのは、がんが治る、延命するという意味ではない。言葉のまやかしなんです。固形がん(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がんなどのような固まりを作るがん)には抗がん剤は効かない。抗がん剤で治るがんは全体の1割。それも若い人の急性白血病、悪性リンパ腫のような血液のがんなどで、それも60歳を過ぎるとまず治らない。つまりは高齢になったら、抗がん剤は無意味」
   さらに、がんは放置すると猛烈な痛みに苦しむ、の間違いついてです。これは、京都大学医学部を卒業され、以後現役で高雄病院院長などを務められた中村先生が、第一線を退かれ、老人ホームの診療所所長を務めたことで知った事実です。先生も以前、がんは治療するものと思っていたそうです。しかし老人ホームで、がん患者が余計な治療をしないおかげで痛みもなく安らかに衰弱死するのを70人近く診て、確信を持ったそうです。
   「がんで痛むのではなく、がん治療で痛むのだと今でははっきり言えます。余計な治療をすることで寿命は縮まるし、体は地獄の苦しみで弱る。いいことはひとつもない」
   そしてがん検診の無意味。これは近藤先生の名言がんもどき≠ノつながるお話です。お二人とも、検診といわれるものは一切受けないそうです。「みやみに検査を受けて病気を探してはいけない。医者の餌食になるだけですよ」とは中村先生。近藤先生に至っては、「うちには血圧計もないから自分の血圧すら知らない。血圧は少し高めのほうが長生きなんですよ。コレステロール値もしかり。日本人はコレステロール値が低い人のほうががんを含めた死亡率は高くなっています。メタボの入り口くらいの少し小太りの層が一番長生きです。さらに検診によるがんの早期発見は、患者にとって全く意味がないです。それどころか、必要のない臓器を傷つけたり取ったりしてしまうことで身体に負担を与えますから命を縮めます」
    早期発見、早期治療という言葉は、完治の可能性がある感染症結核で成功した例だとか。一世紀も前の手法を、がんに対して使うと、早く見つければ完治するという誤解を与えてしますと言います。「よく、がん検診で早期がんが見つかって、手術できれいに取ってもらったから5年経った今も再発しないで元気でいる。私はラッキー、という話を聞きますが、本物のがんなら、見つかる以前に転移しています。なんの害もない、放っておいてもそのまま、もしくは自然消滅してしまうがんもどき≠ナわざわざ手術をして臓器を傷つけたのだから、ラッキーではなく損をしたことになります」
 
    検診、手術、抗がん剤、がん保険は医療ビジネスのドル箱
 
   続いて2章の医療に殺される。これは、日本のほとんどの医者が杓子定規で、ガイドラインを基準にして診断してしまうということです。そして、ガイドラインの根拠となるデータが利益誘導のようなところがあるとか。
   「高血圧のガイドラインも基準値がどんどん下がっています。1988年くらいの降圧剤の売り上げが約2000億円だったのが、2008年には一兆円を越えています。20年間に6倍になっているけれど、その間に病人が増えたわけではなく、血圧の基準値が下がっただけなんです。それも根拠なく、経済的な功利で作ったようなもの。コレステロール低下薬も同様です。そしてがんやインフルエンザ予防注射をメシのタネにする人々がいる。薬の開発販売をする製薬会社。その製薬会社から多額の寄付などの利益供給を受けて治療ガイドラインを作成する学会幹部たち。どのガイドラインを丸暗記して医師試験をパスする名前のみの専門医。彼らはガイドラインに沿った治療法を行わないと医療裁判になったときに負けるから盲目的にガイドラインに沿った治療を行います。病院は手術や抗がん剤治療、放射線治療をすればするほど利益が上がります。そしてがん保険が保険会社にとってドル箱となる」
   と、ほんの一部を紹介しただけも、医療に殺されるという今日の実情が見えてきます。
 
   長寿地獄、医療地獄、管だらけの延命は地獄でしかない
 
   そしてラストの三章が日本人と死。
   この章はやはり中村先生の真骨頂です。今の日本で穏やかに死んでいくことは本当に大変だと言います。放っておいてほしくても、家族にそれを認めさせることが難しい。胃瘻や点滴、鼻からチューブを入れてでも、なにかしらの治療を病院も家族もしたがる。自宅で衰弱死なんてほとんどないそうです。
   中村先生は、ご家族に常々、突然倒れても救急車は呼ばないと言っているとか。その辺で倒れても放っておくように。そばによるな、とリビングウイル(生前の意思)に書いてあるそうです。今の時代は長寿地獄∞医療地獄≠フ社会だと言います。「なにか医療を受けなきゃいけないと言われて受けたあげくボケて、それでも薬を飲めばボケが治ると信じて、また別の薬を飲んでいたり。死ぬ前はとくにひどい。日本人が一生に使う医療費の2割が死ぬ直前に使われるんです。それがなければ医療産業は成り立っていかないんですよ」
   と近藤先生が言えば、間を入れずに中村先生が「だから香典産業といわれるんです。お年寄りは病院好きですから。なにかあったら病院に行ってしまう。自分で調べたり考えたりしない」
   そして最後は、死にゆく姿を見せるという話になっています。近藤先生が、最近の自殺や誰でもいいから殺したかった≠ニ言う無差別殺人に対して、「身近に死がない。病院でみんな死ぬから、非日常になっている。実感がない」と言います。だから中村先生は「年寄りで何もすることがない、と言っている人にまだすることが残っているよ。いろんな不自由を抱えながら、それと上手に折り合いをつけながら老いる姿、そして死んでいく姿をキチッと見せていく役割が残っている≠ニ言うんです」
   いまやベストセラーとなった著者のお二人。ここまで医学界や製薬会社などの実態を明かしても、最近は、以前ほど妨害や苦情はないと言います。
   近藤先生の後書きに「人々は太古の昔から、身の回りでたくさんの自然死≠目撃してきました。しかし、医療技術が発達するとともに、自然死がどういうものか忘れられてしまった。代わりに、医療による悲惨ながん死をたくさん見聞きするようになった。それが、現代人ががんを恐れる最大要因なのではないか。中村先生にも共通する問題意識であったはず。がんは自然に死ぬのは苦しくなくてむしろラク。がん死が痛い苦しいと思われているのは、実は治療を受けたためである、という結論です。そして、検診などでがんを無理やり見つけ出さなければ逆に長生きできるとも。対談が終わって、これだけふたりの意見が一致するのだから、同じことを考えている医者も多いだろうと思いました。しかし、彼ら、彼女らは、村八分を恐れて公言できずにいる」
   と書かれている医者の心、良心が増えることを祈りたいです。そう思える、この本は、対談形式になっていて読みやすく、誰でも納得の一冊です。
 

 


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