食品を調理するときに、「なぜ」「どうして」という疑問を持ったことがあると思います。
そこには調理中に化学変化が起こっていることが多いのです。
また、当たり前のように行っている調理中の作業でも化学変化は起きています。
身近な「なぜ」を簡単に述べてみます。
果物、野菜が変色するのはなぜ?
野菜や果物の中には、皮をむいたり切ったりしてそのままにしておくと変色するものがあります。
変色は野菜や果物に含まれるポリフェノール、酸化酵素などが空気に触れたときに化学変化を起こすのです。
空気中に触れないように、水(食塩水、酢水)につけておくことや、
短時間加熱をすることで酸化酵素の働きを弱くさせることができるので、変色を防ぐことができます。
野菜を茹でるときに塩を入れるのはなぜ?
青い野菜(ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、いんげんなど)には、クロロフィル(葉緑素)が多く含まれています。
このクロロフィルの分子は塩のナトリウムイオンによって安定するので、
塩を入れることで酸化酵素を抑え青色を変色させず、栄養成分が水に流れ出るのを防ぎます。
塩は湯の1〜2%程度が目安です。
じゃがいもは水から茹でるのはなぜ?
じゃがいもはお湯から茹でると中心部まで加熱されにくく、
またお湯から長時間茹でることで細胞膜が破壊されてビタミンCが流れ出てしまいます。
タマネギを切ると涙が出るのはなぜ?
タマネギには硫化アリルという成分が含まれていて、この成分は催涙作用があります。
タマネギを切ると硫化アリルが揮発して目の粘膜を刺激し、涙が出るといわれています。
硫化アリルは水に溶けやすいので、水に浸しながらむいたり切ったりすると涙出にくくなります。
野菜の廃棄率ってなに?
野菜の廃棄される部分を重量からの割合で示したものです。
食品成分表に載っているのは可食部100gあたりで表示されています。
●にんじん 1本200g・・・廃棄率10%(へたと皮20g)
●大根 1本800g・・・廃棄率15%(へたと皮、根120g)
●れんこん 1節200g・・・廃棄率20%(節40g)
肉を煮込むときに弱火にするのはなぜ?
肉の筋や結合部に含まれるタンパク質の「コラーゲン」がゆっくり溶け出して熱によってゼラチンに変化して、
肉をやわらかくし溶けやすくするためです。
肉料理にパイナップルを入れると柔らかくなるのはなぜ?
パイナップルにはブロメリンというタンパク質分解酵素が含まれているため、
肉のタンパク質を分解し、アミノ酸に変化させ肉の旨みを増やしてやわらかくします。
煮魚を作るとき、煮汁を煮立ててから入れるのはなぜ?
煮魚は魚の旨みが汁の中に溶けて流れ出てしまうので、
煮立ててから入れることで魚の表面がすぐに加熱されて魚の身を引き締め固め、旨みがとじこめられるからです。
魚の煮こごりができるのはなぜ?
魚にも「コラーゲン」が含まれていて、熱を加えることでゼラチン化して、
冷えるとゼラチンが固まり、これが煮こごりとなるわけです。
刺身のつまの意味は?
つま(一般には刺身に添えてあるもの)は、
飾りや添え物程度ではなく刺身の栄養価を高めたり消化吸収を助ける役目があります。
●トロ+しょうが⇒香り成分が胃液の分泌を高めてタンパク質の消化吸収がよくなります。
●かつお+あさつき⇒かつおにはビタミンB1が豊富に含まれていますが、
あさつきを加えることでB1の吸収率がアップします。
●いか、たこ+しそ⇒いかやたこにはタウリンが豊富に含まれていますが、
しそのビタミンCを加えることによりタウリンの効果が上がります。
●とり貝+みょうが⇒貝類は消化があまりよくありませんが、
みょうがの香り成分が消化液の分泌を促進して消化吸収をよくします。
※おろしたにんじんをそのままつまとして加えるのは避けましょう。にんじんにはアスコルビナーゼというビタミンC分解酵素が含まれているからです。もみじおろしなどにする場合などは必ず酢やレモン汁を加えましょう。ビタミンCが守られます。
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卵にコレステロールが多いといわれるのはなぜ?
卵黄の脂肪に含まれているコレステロールは1個あたり約230rです。
しかしこのコレステロールは悪玉よりも善玉コレステロールの方が多いのです。
また卵には血中コレステロールを除去する働きのある「レシチン」が含まれているので、
1日に1〜2個食べることで良質のタンパク質を摂取することができます。
牛乳を温めると白い膜ができるのはなぜ?
牛乳を加熱すると白い膜ができ、温め続けると膜は大きくなっていきます。
この白い膜は牛乳に含まれるタンパク質が脂質や乳糖と一緒に固まったものです。
加熱するときにゆっくりかき混ぜることで膜はできなくなります。ちなみに、豆乳を加熱してできる膜は湯葉です。
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