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 レポート 087


『オプジーボ』は、本当にがん治療、夢の新薬なのか!?
−丹羽先生のインタビューと最近の雑誌特集から読み解く−
 
   去年(2018年)、京都大学の本庶佑教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことは記憶に新しいと思います。同時に免疫療法という言葉やオプジーボという薬の名前も耳にすることが多くなりました。オプジーボはがんに対する夢の新薬、という触れ込みもあり、2016年の厚生省の認可以来、注目のがん治療薬でした。今回のノーベル賞受賞でその期待はさらに大きくなっています。
   丹羽先生も、数年前にこの薬の噂を聞き、喜んだそうです。抗がん剤に代わるがんに効く薬ができたのなら、これで私の役割は終わった。よくやく肩の荷を下ろせる≠ニ思ったそうです。
   「ところがそうではなかった。やっぱり駄目なんです」
   以前、インタビューでこのように語り、がっかりされていました。今回、改めて、このオプジーボと免疫療法というものを丹羽先生の最新インタビューをもとに紹介したいと思います。
 
   免疫療法とは?免疫チェックポイント阻害薬とは?
 
   その前に免疫療法とはどのようなものか簡単に説明します。(以下国立がん研究センターのがん情報の記事より)
   私たちの体は、発生したがん細胞を免疫によって排除しています。自分の体の細胞ではないものを異物とみなします。細菌やウイルスなどは異物の代表例ですが、体には異物の侵入を防いだり、侵入したきた異物を排除したりして体を守る抵抗力が備わっています。この仕組みを「免疫」といいます。インフルエンザワクチンなどの予防接種はこの仕組みを利用しています。「免疫」で中心的な役割を果たすのは、血液中の、免疫細胞のひとつである白血球です。白血球と、白血球に異物の情報を伝える役割をする樹状細胞を総称し、免疫細胞と呼びます。免疫はいつも同じ状態ではなく、異物を排除するために強まったり(アクセルがかかる)、強まりすぎたときには弱まったり(ブレーキがかかる)しています。
   がんの免疫療法とは、この免疫本来の力を回復させてがんを治療する方法です。私たちの体は、体内で発生しているがん細胞を免疫により異物をして判別し、排除しています。しかし、免疫が弱まった状態であったり、がん細胞が免疫から逃れる術を身につけて免疫にブレーキをかけることがあり、免疫が弱まったりする。それによりがん細胞を異物として排除しきれないことがあります。免疫療法は、私たちの体の免疫を強めることにより、がん細胞を排除する治療法のことなのです。免疫療法は現在がんの治療で広く行われている外科治療、化学療法、放射線治療に続く治療法として期待され、研究開発が進められています。
   免疫療法の薬、免疫チェックポイント阻害薬というのがオプジーボなどの新薬です。では、その免疫チェックポイント阻害薬とはどのような仕組みなのでしょうか。
   私たちの体は免疫により異物を体から排除していますが、一方で、免疫が強くなりすぎると自己免疫疾患やアレルギーのような病気になるので、自らの免疫反応を自ら抑制する仕組み備えています。しかしがん細胞は、この免疫を抑制する仕組みを利用して、免疫による監視から逃れていることがわかってきました。がん細胞は、細胞表面にタンパク質でできたアンテナを出して、免疫細胞(T細胞)の表面にある免疫チェックポイント≠ニいう「異物を攻撃するな(免疫を抑制せよ)」と命令を受けとるタンパク質(受容体)に結合して偽のシグナルを送り、免疫細胞ががん細胞を攻撃したにようにします。
   そこで、がん細胞が免疫チェックポイントに結合しないようにすれば、がん細胞の周囲にある免疫細胞が、がん細胞を攻撃しやすくなるのではないか、という考えから免疫チェックポイント阻害薬≠ェ開発されました。
   ここまで読んでくれば、なんとも理想の開発ではないかと思うのですが、丹羽先生は、「人間の体というのは非常に複雑にからみあい、絶妙なバランスでできている。一か所の一部分の悪いものを薬で排除すれば、バランスが崩れ、副作用という見返りがくる。ましてや人間の細胞はちょっとした環境の変化や(公害など)、心の変化(ストレスなど)、生活習慣(食生活、運動)などでどんどん変化していくもの。ひとつの薬でなんとかできるものではない」と言っていました。
 
   どんな副作用がいつあらわれるかまだわからない
 
   (以下、国立がん研究センターのかん情報サービスの記事より)これまでの研究では、残念ながらほとんどの免疫療法で有効性(治療効果)が認められていません。現在、臨床での研究で効果が明らかにされている免疫療法は「がん細胞が免疫にブレーキをかける」仕組みに働きかける免疫チェックポイント阻害薬などの一部の薬に限られ、治療効果が認められるがんの種類も今はまだ限られており、ほとんどの免疫療法は研究開発中です。なお、新しい薬や新たに保険診療として認められてたがんの種類では、どのような副作用が起きるかわからないことから、より慎重に使用されます。
   免疫療法(効果あり)ではすぐに治療効果があらわれることが多いですが、場合によっては治療の開始からがん細胞への免疫の機能が高まるまでに日数がかかることがあります。治療を開始してから数か月後にがんが小さくなる場合や、一部の患者さんでは免疫療法(効果あり)を終了してからも治療効果が長く続く場合がることがわかってきました。そこで、化学療法とは別の効果判定の考え方が必要とされ、免疫療法(効果あり)の特性にあった効果判定の基準が検討されています。
   現在までのところ、標準治療となっている免疫療法(効果あり)についてもすべての患者さんに効果がるわけではなく、一定の割合の患者さんに効果があることがわかってきました。免疫療法(効果あり)が、どのような患者さんの長期の生存につながるかどうかについては、まだまだ多くの時間をかけて研究する必要があるとされています。
 
   認可承認時と現在では治療結果に違いが!
 
   つまりは、免疫療法というのはまだ開発途上のもので、認可されたオプジーボに関しても、一部の患者さんにのみ有効だと。そして、それがどのような患者さんに有効か否かはまだ解明されていないということです。その報告に呼応するように雑誌「サンデー毎日」が昨年末に数回にわたって「オプジーボはがん特効薬か」とした特集を掲載さていました。
   記事によると、確かにオプジーボの開発は、本庶教授が受賞後の講演で「今世紀中にがん死≠ヘなくなる可能性も…」と自負するように画期的なことだ。早々に保険適用になり、患者からも「万能薬」であるかのように受け止められている傾向がある。と前置きしたうえで、しかし、と疑問符を投げかけています。
   その疑問のひとつが、本当にオプジーボで人の免疫システムはよみがえるのかということです。
「最近の知見によると、がん細胞は免疫細胞の攻撃能力を無力化するとともに、樹状細胞(免疫システムの司令塔の役割を持つ細胞)の命令能力まで無力化してしまう。だからオプジーボががん細胞による免疫細胞の無力化を解消しても、司令塔がダウンしたままでは、免疫細胞が十分に攻撃能力を発揮できるか定かではない」
   といいます。さらにもうひとつの疑問が、保険承認後の製薬会社が公表した、進行期の非小細胞肺がんの患者を対象にしたデータです。それによると、抗がん剤を投与された患者とオプジーボを投与された患者では、生存期間にほとんど差がないどころか、抗がん剤のほうが生存期間の割合が高かったという結果になったということです。
   この結果は、肺がんだけではなく、皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)でも同様だったそうです。
「承認時に比較試験で有効性が肯定されたからオーケーと考えるのではなく、承認後の比較試験で有効性が否定されたらノーグットと考えるのが科学的な態度といえるのでは。しかし、日本の薬事行政の歴史を見ると、厚生省がいったん与えた承認を取り消すことはほとんどない」
 
   最後の疑問が、副作用です。このこは丹羽先生も懸念していたことでした。その一部を記事より紹介すると、
「製薬会社からオプジーボの保険適用から1年半後の2016年1月に緊急警告文書が医師から配布されています。その文書には糖尿病患者への注意喚起として本剤の投与により、劇症1型糖尿病があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシスに至ることがあります≠ニ書かれています。劇症1型糖尿病は、膵臓にあるインスリン産生細胞が免疫細胞によって破壊されることで発症します。その結果、患者はインスリンの不足状態からケトアシドーシス(重篤な合併症)に陥り、多くの患者が死亡してしまいます。やはりオプジーボは今はまだ人の免疫システムに重大かつ深刻な影響を与えるのではないか」というのです。
   副作用といわれるものは、肺がん患者にも多くみられるとか。肺がんに対する臨床試験が行われていた病院の試験担当医が「臨床試験中に患者が急死してしまうことが頻繁にある」といったそうです。「その場合の死因は、副作用ではなく肺がん死として報告されていく」と。さらに医師は「抗がん剤の臨床試験でも副作用ではなくがん死として処理されてきたから同じだ」と言ったそうです。
   記事は最後に
「オプジーボを投与した場合、なぜこれほど重篤副作用や副作用死が出てしまうのか。免疫学者たちが口をそろえていうのが免疫暴走≠ニいうことばである。某免疫学者は、免疫細胞はウイルスなどの外敵を攻撃しますが、外敵でない自己を攻撃し始めると大変なことになるという」
   これこそ丹羽先生が長年研究、治療してきた自己免疫疾患による膠原病(リウマチ、全身性エリトマトーデス、ベーチェット病など)に通じるものです。
 
   化学薬品による生態系を崩す開発合戦はええかげんにしておけよ!
 
   これらのことを踏まえて丹羽先生に話を聞いてきました。
―――先生、ここにきてまたオプジーボが話題になっていますが、先生が以前に副作用が心配さとおっしゃっていた通りになっているようですが?
「免疫療法の副作用は、怖いという意味では毒ガスが原型の抗がん剤といっしょです」
 
―――どうしてそうなるのでしょうか?
「やはり人間の免疫機能を攻撃してしまうのが今の免疫療法だから、怖いですよ。がんへの新しいアプローチとしてみんな盛んに研究しているのはいいが、免疫をいじると大変なことになるということも知っておくべきですね」
 
―――手術、抗がん剤、放射線に次ぐ新しい治療法として、今、なんでもかんでも免疫と言っていますが、どうしてそこにいくのでしょうか?
「ノーベル賞というのも大きいが、免疫療法というと聞こえがいい。なんか新しくて体に負担が少なそうないいものができたように聞こえる。それがいけない。それは竜宮城ではないんです」
 
―――厚生労働省はどうしてこんなに早く認可をしたのでしょうか?
「世の中が、抗がん剤は百害あって一利なしとか、やっても意味がないということを認知し始めたんです。そうなると他に抗がん剤に代わる新しいものが必要なわけです。新しいものを認可していかないと何もしていないように見えて叩かれる。少しでもいいものが出たら認可するしかない。ましてやノーベル賞を取ったら認可して正解だったと喜んでいると思いますよ。しかし、早すぎた認可のせいで苦しんでいる患者さんとその家族がいることを知らなければいけない」
 
―――病院や医師たちには使用に関しての注意喚起がなされているようですが、私たちはまったくわからいです。
「そうです。さらに抗がん剤と同じで、オプジーボなどの免疫療法も副作用で亡くなっても、がんで亡くなったことになるんです。副作用の立証をしないからわからないんです。医者に、あなたはがんですね、効く可能性は20%ですが、新しい薬を試してみますか?と言われて試して、苦しんで死んでいくんです。もうそういうのはやめたほうがいい」
 
―――でも、免疫療法に期待がかかっているということは、これからも推進されるのでしょうか?
「雨後のタケノコのように免疫と名の付く治療法や薬が出てきますよ。言っておきますが、人間の免疫力というものをあなどってはいけません。化学薬品で操作できるものではないんです。こっちを操作すればあっちに支障が出る、そういうものなんです。万が一にも研究が進んでなんとかいいものができるとしても、うんと先のことになるでしょう。こんなに早く認可などしちゃいかんのです」
 
―――そうなるとやはり生薬からできた先生の薬がいちばんになってきますね?
「あたりまえです。化学薬品による生態系を崩す開発合戦は、ええかげんにしておけよ!と言いたいです。人の命をなんだと思っているんだと言いたい」
 
※文中に「免疫療法(効果あり)」としているものは、国立がん研究センターのがん情報サービスによれば、エビデンスが化学的に実証されている免疫療法に関して効果あり≠ニ記し、他の免疫療法と呼ばれているものと区別しているためだそうです。

 


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