ホーム丹羽療法 治療レポート > 話題のiPS細胞とは? −丹羽先生の近著に早くも詳しく記載が−
 

 レポート 061


話題のiPS細胞とは?
−丹羽先生の近著に早くも詳しく記載が−
 
   先頃、京都大学の山中伸弥教授が再生医療の実現につながるiPS細胞を初めて作成したとしてノーベル生理医学賞を受賞しました。この発表は、日本中を駆け巡り、久しぶりの明るいニュースに湧きました。さらに、テレビや新聞はこぞってその研究が、夢のような再生医療ですぐにも実現されるかのように伝え、この聞き慣れなかったiPS細胞は一躍、医療の希望の光の役割を担う事になりました。
 

   そんななか、丹羽先生は、この発表の前に早くもiPS細胞について、近著「国際がん学会が認めた、延命効果世界一の『丹羽がん療法』(徳間書店発行)」で詳しく触れています。今回はそのようなこともあり、iPS細胞を始めとする最先端医療について、丹羽先生の見解をうかがってきました。
 
   iPS細胞は、神経や筋肉などいろいろな体の部分になることができる細胞で、万能細胞とよばれています。たとえば、病気で内臓が悪い人がいたとすると、その人の皮膚から細胞を取り出して、iPS細胞にすれば、iPS細胞を内臓の細胞に成長させることができるそうです。手術で悪くなった内臓の細胞を、iPS細胞で作った細胞と取りかえれば、病気を治せるというわけです。今は、臓器移植という選択しかなく、その場合、ほかの人の内臓はその人に合わないことがあり、拒絶反応の危険があります。またそれを押さえるためにリスクのある免疫抑制剤を使用せざるを得ないのが現状です。さらに移植に適した内臓の数も少なく、厳しい状況でした。でも、iPS細胞ならば、もともと自分の細胞だから合わないことはないし、いつでも欲しい体の部分の細胞を作り出すことができるそうです。

 
   iPS細胞を増やすにはがんを抑える酵素をなくさなければならない
 
―――先生の母校、京都大学の山中教授がノーベル賞を取られました。
「iPS細胞の研究がとうとうやりましたね。再生医療の分野は京都大学が世界でいちばん進んでいるんです。この再生医療とは、iPS細胞で正常な細胞を増殖させて、死んでしまった体の組織、失われた細胞組織の修復を図ろうという医療なんです。現在、全世界から注目されている人類の希望とも言える治療法ですね」

 
―――まだ実際の治療には使われないようですが?

「先日、やはり京都大学の研究チームが心臓を動かす心筋細胞を効率的に変える小分子合物を発見したと発表したと発表したように、ほとんど実験段階が確率して、人の病気にも応用されようとしています。そのことは非常に結構な事ですが、やはり、この医療も慎重に取り組んでいかないと、大きな落とし穴が待ち構えています」
 
―――落とし穴というと?

「私が抗がん剤の副作用で言ってきた自然の系の問題になるんですが、iPS細胞で正常な細胞を増殖させると、正常な細胞のなかにわずかに存在しているがん細胞も同時に増殖させるという事になるのです。ここがiPS細胞の一番危険な問題なんです。私は、再生医療に関して、またその研究に日夜努力をされている優れた研究者の方々には敬意を表しています。また、その成果も素晴らしいと思います。ただ、iPS細胞には発がんの危険性があることをメディアはもう少し伝えるべきではないかと」
 
―――それは伏せられている事なんでしょうか。知らない事なんでしょうか?
「研究者の方で、この道のプロの方々ならみなさん知っています。なぜかというと、数年前にiPS細胞の成果が得られるようになってから、メディアで次々報告される内容に『今度できたiPS細胞は発がんの危険がない』ということが時々ちらっと付帯報告されているんです。つい最近も同様の報告がNHKの番組で紹介されていました。iPS細胞は確かに失った組織を再生できてありがたいことには間違いない。けれど、どうして『常に発がんの危険性を伴いますよ』と初めにはっきり言わないのか。言わないものだから普通の人は危険のない夢の医療だと思っている」
 
―――発がんの危険があることのメカニズムを私達にも分かるように教えて頂けませんか?
「本に詳しくかいたけれど、細胞周期というのが問題なんです。人間の細胞はそれぞれ新陳代謝をして生きています。増殖して止まり、減少していく。これが次々繰り返られているわけです。そのなかで、今まで増えていた細胞が終止期に入るために、Rbタンパク質、P53タンパクというタンパク酵素が出て来て、火事を消す消化器のような役割をして増殖を抑えるんです。この事が発見されたときは、これらの酵素ががんの増殖もいっしょに抑えることができるといって、副作用のない抗がん剤として使う動きもあったくらい、世界が注目する研究のひとつでした」
 
―――いろんな先生が、体内には健康な人でもがん細胞は存在するといいますよね。ただそれがストレスや食生活、睡眠不足などが原因で増殖したり、また、遺伝子異常で増殖したりしない限り、普段はこれらの酵素が活躍して抑えているわけですか?
「そういうこと。ところが、iPS細胞である部位の細胞を増殖させるということは、終止期に入らずずっと増殖させる事なんです。つまり、RBタンパク、P53タンパクの働きを抑えないといけない。iPS細胞を作るときはこれらの酵素の働きを叩いて、完全にストップさせているんです」
 

―――ということは、がんも増殖するかもしれないわけですよね?
「そうです。非常にがん化する危険性を伴うんです。私はこのことで山中教授に今年の始めに質問状を出したんです」
 
―――さすが丹羽先生ですね。お返事は?
「いただきましたよ。非常にていねいなお返事を。ただ、やはり一般論にのみ止まり、私が知りたかった事には触れられていませんでした。ひとつはまだ研究段階で、公にはできない事も多いから仕方ないのでしょう」

 
―――山中教授の会見などを拝見していても、まだ実際に使用するには研究を重ねないといけないというような、非常に慎重な発言をされていますよね。

「現場の方々は良くお分かりだと思います。再生医療はスタートラインに立ったばかりで、これから長いスパンの臨床データなどが必要になってくると。しかし私は、功を急ぐ勇み足の医学者が臨床に起用した末に、がん患者が多発する、という将来になるんじゃないかと心配しているんです」
 
―――最先端医療には必ずリスクもついてくるということですね。丹羽先生の療法とは対極ですね。
「私の基本は、やはり、正常な細胞を叩く抗がん剤に反対。それとは逆に、がん細胞を増やしてしまう再生医療にも危惧を抱いています」
 
―――しかし、再生医療の研究がこのようにクローズアップされるという事は、もう抗がん剤などでは、がんを始めとする難病は治らないということを研究者や医者が知っているということではないのでしょうか?
「裏を返せばそういうことです」

 

164