ホーム > 健康大特集T > C悪玉酸素退治には良質の...

悪玉酸素退治には良質のたんぱく質を
とるのが一番で肉・魚・卵の常食が有効

   人間総合科学大学教授 熊谷 修
 

たんぱく質を十分に
とる人ほど健康で
長生きするとわかった

たちが、毎日、呼吸で取り入れている酸素の約二%は、活性酸素という、毒性の強い悪玉酸素に変化します。

  もしも、私たちの体に抗酸化力が備わっていなければ、体はすぐに酸化されてサビつき、老化の速度が速まっていくでしょう。そして、活性酸素にようる害が最も現れてくるのは、高齢の人たちです。
  そこで、年を取っても、活性酸素の害を抑え、傷ついた組織を修復する抗酸化力を維持するためには、まず栄養状態をよくしておくことが重要です。
  私はこれまで、老化についてさまざまな研究を行ってきました。長年の研究でわかったのは、ふだんの食生活がいかに大切かということでした。つまり、栄養状態がよければ、加齢(年を取ること)によって失われがちな体の抗酸化力が維持され、老化も先送りできるのです。
  では、そのような食生活をしている人が、いつまでも若さを保ち、長生きすることができるのでしょうか。私たちの研究によれば、肉、魚、卵、牛乳、油っこいものをよく食べる習慣のある高齢の人たちほど、元気なことがわかりました。

  1996〜2000年までの4年間、私たちは、秋田県南外村の高齢者の人約1000人を対象に、ふだんよく食べる魚介類、大豆製品、緑黄色野菜などに加え、肉・卵・牛乳などの良質の動物性たんぱく質食品と脂っこいものをしっかりとる、比較的高たんぱく・高脂肪の食事をしてもらう活動をしました。
  すると、血液中の栄養状態を示す物差しである、血清アルブミンの数値が上昇していったのです。血清アルブミンは、老化の指標としてよく使われ、この数値が上がるということは、老化の進行が抑えられていることを意味します。
  筋肉や血液、酵素(体内での生理反応を助ける物質)、ホルモン、免疫物質など、私たちの体の主要な部分は、たんぱく質によって支えられています。それだけに、老化や病気に負けない体をつくるうえで、良質なたんぱく質を十分にとることが、不可欠なのです。

 

毎日10食品群を
とれば寝たきりになる
危険率がぐんと下がる

  一般に、高齢になると粗食がよいと思い込み、栄養のバランスを崩す人がたくさんいます。その結果、貧血に悩む人も増えてきます。ところが、たんぱく質を十分にとる食生活を続けていれば、からだの栄養状態の改善だけでなく貧血も予防できることが、私たちの研究でわかっています。
  毎日の食事で、30品目とろうという指針があります。この指針は、多様な栄養素をとるためのものです。この方法だと同じ食品群でも品目が違えば加算してしまいます。一般に同じ食品群に属する食品どうしは、含まれている栄養素が類似しています。そのため、品数が多くとも食品群が偏っていると、必ずしも多様な栄養素がとれているとは限りません。

  そこで、主菜や副菜を構成する10食品群選び、その摂取頻度でふだんの食習慣の健康度を評価する方法を開発しました。
  私の評価法では、肉・魚・卵・牛乳・油脂・緑黄色野菜・イモ・海藻・果物・大豆製品の10食品群を毎日とると、10点になります。そして、得点水準を3群に分け、5年間に間にどれくらい生活機能が低下するかを調べたところ、「1〜3点群」に対して、「4〜8点群」は約30%、「9〜10点群」は、約40%も生活機能障害の危険率が低いことがわかりました。
  この結果は、良質なたんぱく質を十分にとり多様な食品をとる食習慣のある高齢の人ほど、寝たきりになりにくいということを示しています。

血清アルブミン
  血液中を流れているたんぱく質の約60%を占めている重要なたんぱく質。体の各組織の再生に使われ、加齢に伴い低下するため老化の指標となる。中年期で数値が低いとガン、肝臓病(肝硬変)、腎臓病(ネフローゼ症候群)などの重い病気にかかっている疑いがあるので注意が必要。
  人間ドックでは、必ず測定される。70歳以上では1年に1度、数値を確認し老化度チェックを。