[§4 「肌あれ」と肌の乾燥]

§4-2

「肌あれ」の原因(2)
皮膚組織の変性による「肌あれ」

丹羽靱負・土佐清水病院院長:月刊安心

 

  本項では「皮膚組織の変性による肌あれ」について掲載します。要約すれば、大気汚染や紫外線の増加、食生活の変化などで、増加した活性酸素が体内の脂質と結びつき、過酸化脂質を作り出す。この結果肌が乾燥するというものです。丹羽博士はアトピー性皮膚炎を例にして、肌の乾燥について述べられています。
 
 

活性酸素は脂質と結びつき過酸化脂質に

 
  私はアトピーの主因は『活性酸素』にあると長年主張してきました。活性酸素は体内にあるコレステロール、中性脂肪などの脂質(正確にいうと不飽和脂肪酸)と結びついてこれを酸化させ、過酸化脂質という有害な物質を作り出します。
  過酸化脂質は血管、臓器、皮膚組織に付着して生体に障害を与えます。悪いことに細胞内部に浸透する性質があり、体内にとどまる時間も長いのです。したがって実際に害を及ぼすのは、活性酸素ではなく過酸化脂質だと考えられます。
 
 

過酸化脂質が皮膚を異常に乾燥させる!

 
 
欧米化食で不飽和脂肪酸の摂取量がふえ体内の活性酸素が結びつき、大量の過酸化脂質が作られます。それがアトピー性皮膚炎をはじめ多くの病気を引き起こし、症状の悪化に拍車をかけます。アトピー性皮膚炎の場合、体内に生じた過酸化脂質が皮膚の最上層である角質層にまで浸透して水分保湿機能を奪い皮膚を異常に乾燥させているのです。その結果皮膚は弱くなり、長じれば炎症を起こします。

多くの環境汚染がアトピー増加の主役だ

 
  活性酸素が体内で過剰に発生する主な原因のひとつは、フロンガスの使用により大気中のオゾン層が破壊され紫外線が増加したことがあります。紫外線を過度に浴びることは、体内での活性酸素の発生につながります。農薬、食品添加物、工場の排煙や自動車の排気ガスから生まれる窒素化合物に至るまでの化学物質も、体内で活性酸素を発生させる原因となります。
  つまり、現代社会が生み出した環境汚染こそが重症化、難治化の一途をたどるアトピー性皮膚炎の大きな原因なのです。