(a)代替きかないSODが最も重要
活性酸素は体内で非常い殺菌上必要な量だけ存在するとは限りません。過剰に産生されると侵入細菌ばかりでなく、自分の体にも害を及ぼすようになります。すると、SOD、カタラーゼ(catalase)、グルタチオン・バーオキシダーゼ(glutathione
peroxidase,GSH‐Px)という酵素が、この過剰に産生された活性酸素を取り除いてくれるようになっています。
これらの酵素の中では、特にSODが過剰な活性酸素の害を防ぐための重要な物質と考えられています。カタラーゼやグルタチオン・バーオキシダーゼはこの二つの酵素に代わって働く物質が多くあり、あまり重要ではありません。
人間では40歳を越しますと、この活性酸素の害を取り除くSODの能力が弱くなり始めます。中高年のかかる病気が、過剰な活性酸素が原因で起こる病気が多いのも、活性酸素を除去するSODの力が低下してくることによるものなのです。また、特にSODが6番目と21番目の遺伝子に支配されているため、同じ年代の人でも、その力に個人差のあることも特徴です。
(b)問題はSOD誘導能
高齢者に活性酸素が原因で発生する病気が多いことや、過剰な活性酸素による病気の発生などから、こうした病気にかかるお年寄りや病人はSODの値が低いと一般的には考えられがちです。
ところが丹羽博士の長年にわたる実験や臨床観察の統計学的分析によると、老人と若人、病人と健康人の体の組織や血液の細胞でSODを測ってもその差はみられませんでした。このことは、SODが『活性酸素や過酸化脂質が増加した時に上昇して活性酸素の増加に変化する』ものである、平常時においては、SOD値がほとんど差のないことがわかりました。(Blood,76,835,1990国際的な医学誌『ブラッド』誌における丹羽博士の寄稿)
一般に老人や病人はSODの値が低いため、老化したり病気にかかるとかんがえられがちですが、そのような身体の組織や血液中のSOD値の高低ではなく、SODが活性酸素や過酸化脂質の体内での増加に対応して上昇するかどうかが肝心なことなのです。
つまり、ある人が活性酸素や過酸化脂質に関連した癌やその他の病気にかかるかどうか、あるいは、この人のSODの力が弱って老化しているかどうかを知るためには、活性酸素や過酸化脂質の増加に対応してSODが上昇する能力があるかどうかを調べる測定法が必要なのです。単にその人の血液や組織の活性酸素や過酸化脂質を測定しただけでは不十分なのです。
SOD値の多寡ではなく、年齢を重ねてSODの誘導能(上昇する能力−induction
capacity,inducibility)が低下することで、癌や心筋梗塞、脳梗塞など、脳・心血管障害で死亡する確率が非常に高くなることについて、丹羽博士の研究成果が『ブラッド』誌に掲載され、内外の医学研究者に広く引用されるところとなっています。
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