第2章  活性酸素を取り除くSOD


 1  活性酸素と過酸化脂質

 
(a)活性酸素とは

  活性酸素はヒトが呼吸するときに取り入れる酸素とは異なります。呼吸で取り入れる酸素は生命組織や細胞が活動する上で必要なものですが、『活性酸素』とは全く違ったものです。酸素と少し異なり、化学構造上ではどんな物質とでも非常に反応しやすい物質で、その役目は『活性型の酸素』として、細菌やかびや異物に反応して結合することで、これらを破壊・殺菌しています。
  一口に活性酸素といってもO2-、H2O2、OH・、Oの4種類があります。おおよその化学式の変化はこうです。まず酸素(O2)から酸素イオンO2-が作られ、次にO2-がH2O2に変化しさらに過酸化水素H2O2からOH・とO2が作られます。
  そして、これらの4種の活性酸素中OH・とO2-が最も強力であるといわれています。活性酸素が反応性に富むという理由は、例えばO2-は、酸素(O2)にマイナスの電子を持っているため、自分が安定しようとして、プラスの電子を持ったものと反応しようとします。
  また水H2Oが安定しているのに対して、H2O2は酸素原始(O)が1個余分で、この余分な1個も酸素(O)が不安定で、安定した酸素分子にO2なろうとして酸素原始Oを持った物質と反応するため、反応性に富んでいるのです。
  このH2O2は一般に消毒になどに使われるオキシドールで、活性酸素の一種です。傷口に塗布すると泡がでるのは、このH2O2の余った(O)が細菌の持つ(O)と結合して反応した際に発生するもので、細菌はこのH2O2から遊離してきて(O)に、自分の(O)を奪われ死滅するのです。
  一方、OH・は、水素Hが手に入れば水H2Oになって安定するので、水素Hを持った物質と反応しやすいのです。
  有名なオゾン(O3)も広い意味では活性酸素に属します。しかし、オゾンは動植物の体内で生成されないので、正確には活性酸素の範疇に入りません。オゾン(O3)は酸素O2に酸素原子1個(O)が化合しています。この酸素原子(O)が不安定で、他の酸素原子(O)を持った物質と結合して酸素分子O2になるよう、反応します。ですからオゾンO3とオキシフルH2O2の作用は共に殺菌作用持っていることに共通点があります。
 
(b)過酸化脂質の恐ろしさ
  次に、過酸化脂質は、活性酸素が脂類(脂質)と反応してできます。その過程を表にまとめてみました。
  活性酸素は、菌や異物を溶かす非常に強力なものでも、生体でできてすぐに消失してしまいます。それに対し、過酸化脂質は、菌や異物・組織に対する反応はあまり強くなく、また腎臓から排泄されずに、身体に蓄積されます。蓄積した過酸化脂質は、組織や臓器や細胞の内部へと徐々に浸透していき、細胞そのものを傷付け破壊していきます。
  このようなことから生体への実際の害は、活性酸素そのものではなく、むしろ活性酸素と脂質が反応してできた化酸化脂質こそが主因であると考えられています。
  しかし、摂取したすべてのアブラ脂肪分が過酸化脂質になるわけではありません。分子構造であらわしたときに2重・3重結合を有する不飽和脂肪酸でなければなりません。この二重・三重結合のところに活性酸素が結合してきて、この不飽和脂肪酸の『アブラ』を過酸化脂質に変化させるのです。
  身近なところでは、夏場において油分を多く含む食品が、その油分が酸化して食品を劣化させます。夏場、気温の上昇により化学反応が起こりやすくなるためなのですが、活性酸素と油分の結合反応も促進され、過酸化脂質に変化しやすくなります。こうしてできた過酸化脂質が体内に摂取されると、様々な病因になります。
 

活性酸素と過酸化脂質

活性酸素  +  脂質   ⇒   過酸化脂質
(血流)    (コレステロール)          
中性脂肪
(食事)    不飽和脂肪酸              

  強さ 作用時間 作用部位
活性酸素 非常に強い 短い 細胞の表面
過酸化脂質 やや強い 長い 細胞の内部に浸透する
 
  あるいは、いくら開封したてのバターでも表面は黄色みを帯びていますが、牧場や一流ホテルの新鮮なバターなら、白色に近く味もさわやかで、格段においしいでしょう。
  これは、空気中の酸素(O2)が何らかの原因で活性酸素である(O2-)に変化し、バターの表面の不飽和脂肪酸と結合して、過酸化脂質になってしまっているのを食べているからです。一方、一流ホテルにある表面の白いおいしいバターは、超期間保存せず、表面に存在する『アブラ』(不飽和脂肪酸)が空気中の酸素や活性酸素と反応結合する以前のものだからなのです。
  このようにして私たちの体内に蓄積される活性酸素・過酸化脂質が実際にどのような病気を惹き起こすかについては第4章で説明します。