アルツハイマー病と活性酸素
アルツハイマー型痴呆にも活性酸素が関与・予防も可能!?

  アルツハイマー病に活性酸素が関与していることが、徐々にわかってきました。アルツハイマー病では、脳内の脂質が異常に酸化した結果できるリボフスチンが脳の中にたくさん出現し、アルツハイマー病特有の線維(アミロイド線維)が増えてきます。ここでは、活性酸素がアルツハイマー病に関与していることを示唆する、最新の資料を掲載します。

 

脳内の脂質が活性酸素により酸化
酒井 豊・防衛医科大学名誉教授監修:「老化・癌・成人病の原因!?活性酸素は、こうして防ぐ」(小学館)から

 
  老人性痴呆が話題になっていますが、これも活性酸素とのかかわり合いがある可能性があります。脳はたいへん脂質が多く使われている器官なのです。ですから、当然活性酸素の攻撃も受けやすい素質をもっています

 
■ アルツハイマー病も脂質の酸化が関係?
  老人性痴呆の原因の一つであるアルツハイマー病では、大脳全体が萎縮して、脳を形づくっている神経細胞が小さくなったり、消えてしまったりします。そして、脂質が異常に酸化した結果できるリボフスチンが脳の中にたくさん出現し、アルツハイマー病特有の線維(アミロイド線維)が増えてきます。
 
■ 女性はアルツハイマー病にご注意を!
  脳の材料となっている脂質に、ドコサヘキサエン酸という不飽和脂肪酸が使われていますが、このドコサヘキサエン酸は酸化されやすい脂質で、リボフスチンの増加とも関係があるといわれています。
  ドコサヘキサエン酸は男性よりも女性の脳に多く含まれていて、アルツハイマー病が女性に多いことと関係があると指摘する研究者もいます。

 

 

脳内のβ蛋白が出す活性酸素によって発症
内田洋子・東京老人総合研究所研究員:朝日新聞(95-02-06)から

 

  アルツハイマー病の原因とされる蛋白質「アミロイド・β」の毒性を脳に含まれる成長因子(GIF)が緩和することを東京老人総合研究所の内田洋子研究員(神経病理学)たちが動物の細胞を使って確かめた。
  アルツハイマー病患者では、脳の中にβ蛋白が多量に沈着している。この蛋白質の毒性により神経細胞が死に、痴呆症状が出るとの説が有力だ。ところが、この蛋白質は細胞を使った実験では、毒性があるが、脳にたまっても痴呆症状が現れない人がいる。そこで内田さん達は、脳に毒性を抑える物質が含まれていると考え、神経細胞を維持する働きを持つGIFに着目。ネズミの細胞で、β蛋白が40%ほどの細胞を殺す状態にGIFを加えると、15%ほどしか死ななくなった。
  β蛋白は細胞を傷つける活性酸素(フリーラジカル)の生成に関係があるとされる。内田さんは「GIFにはフリーラジカルを捕まえる力があるので、β蛋白の毒性を抑えるのだはないか」と考えている。

要          約

 
@脳の生理的活動の中で作られるアミロイド・β(β蛋白)は、毒を出して(活性酸素を産生して)、脳神経細胞を殺し、アルツハイマー病にいたる。
 
A成長因子(GIF)を投与すれば、活性酸素を捕獲するので脳神経細胞は障害から免れ、アルツハイマー病の可能性は減少する。
 
B「アミロイド・β(β蛋白)が出す活性酸素が脳神経細胞を殺し、アルツハイマー病になる」ことがわかり、活性酸素が悪役の仲介をしていることが理解できます。