老年期痴呆A:アルツハイマー型痴呆
アルツハイマー型痴呆にも活性酸素が関与・予防も可能!?
中村重信・広島大学医学部教授:「アルツハイマー病」(日本放送出版協会)から

  アルツハイマー病の原因は、はっきりわかっていません。しかし、そのメカニズムは解明されつつあります。アルツハイマー病は、脳が萎縮して痴呆が起きる病気です。老人性痴呆には、アルツハイマー病以外に、脳血管障害によるものもあり、かつてはこちらが多かったのです。最近ではアルツハイマー病による痴呆が増え、老人性痴呆の半数近くを占めるようになってきました。

 

アルツハイマー病の原因とメカニズム

 

 原因(現在、推定されているもの)
 

 加齢

  40〜50歳代から起こるようになり、高齢者ほど有病率は高くなります。
 
 遺伝子
  人間には23対の染色体があり、その中の第14、第19、第21染色体のいずれかに異常があると、アルツハイマー病になりやすいことがわかっています。
 
 環境因子
  知的活動を行わない生活、頭部の外傷、糖尿病なども、アルツハイマー病の発症に関係しています。加齢や遺伝子は、本人にはどうしょうもない問題ですが、そのような素地があるところに、環境因子が加わると、アルツハイマー病が誘発されるのです

 
 現在推定されているメカニズム
 
 第1段階:アミロイド線維が付着する
  アミロイド線維という蛋白質の一種が神経細胞に付着し、神経細胞の働きがおかしくなります。
 
 第2段階:脳の神経細胞が障害される
  アミロイド線維が付着すると、脳の神経細胞にある蛋白質が変化して、神経細胞が死滅します。
 
 第3段階:脳の萎縮が起こる
  脳はいわば神経細胞の塊です。神経細胞が次々と壊死していくことによって脳が萎縮し、アルツハイマー病の様々な症状が現れてきます。

 

 
アルツハイマー病の初期症状

 
■ 痴呆症状は脳の萎縮の現れ
  アルツハイマー病の症状というと、いわゆる痴呆症状を思い浮かべます。記憶力や判断力が鈍り、場所や時間もわからなくなる、などの症状です。しかし、それは既に脳が萎縮してから現れる症状で、その前に初期症状が現れるのが普通です。
 
■ 前段階の初期症状のチェックが重要
  脳の萎縮を示す痴呆症状が現れる前に、例えば、次のような初期症状が現れます。うつ状態不安感心気症妄想症などです。具体的には、「気持が落ち込んだり、様々なことが不安になる、体のどこかが悪いのではないかと気に病む、独断的、猜疑的になり孤立する」といった症状が現れるのです。いままで初期症状があまり問題にされなかったため、これらの症状も見過ごされてきました。

 

 脳の断面図像
白く見えるのが脳です。正常な人の脳に比べ、アルツハイマー病の患者の脳は、記憶の中枢である「アンモン角」(下の矢印)や、記憶や判断力に関係する「頭頂葉」(上の矢印)が萎縮しています。

MRIで見る脳の萎縮