癌制圧の限界極めて
泰 洋一・朝日新聞編集委員:朝日新聞(96‐11‐25)から
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がんとの闘いは楽観を許さない |
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米国で癌になる死亡率がわずかに低下?
米国の代表的ながん研究誌「キャンサー」に、米国人の人口に対するがん死亡率がわずかながら、年々、低下しているというアラバマ大学公衆衛生学部の疫学者たちの報告が掲載された。
主因は、男性に喫煙に減少による肺がんの罹患率の低下、つまり予防活動の成果と乳がんなどの治療率向上だという。同誌は、がんとの闘いにやっと曙光がさしたと歓迎している。
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依然・がんとの闘いは楽観を許さない!
一方、死亡率低下はごくわずかであり、今後の米国の高齢化で、がん診断と死亡の絶対数が増えることから、がんとの闘いには楽観を許さないとくぎを刺している。
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がんの大部分は老化による「高齢病」 |
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がんの大部分は老化が基盤の「高齢病」
こんな慎重な評価の背景には、人口の高齢化に伴い、先進諸国ではがんによる死亡率が増加の一途をたどっているという現実がある。
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癌が死亡率の第一位!3人に1人が癌死!
癌の大部分は老化による「高齢病」の要素が強いがらだ。日本でも1960年代から早期発見・早期治療への努力が進められてきたが、この間、癌が死因の第一位になり、昨年は3人に1人弱(26万3000人)が癌でなくなった。大阪府立成人病センターなどの予測では、今後、50歳未満の年齢層の癌患者数はほぼ横ばいだが、70歳以上の癌が急激に増え、2015年には全体の癌患者の3分の2近くに達する(下グラフ)。
癌が見つかった人々のその後に延命期間は確かに延びている。例えば国立がんセンター病院に入院してから5年間生存する患者に割合は6割に近づいている。
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難治癌が増加し「癌征圧」の成果は微々たるものだ!
高齢化とともに、肺・膵臓・胆のうなどの「難治癌」が増え続けており、2015年には難治癌が全体の四割に迫る見通しだ。日本人の癌死亡率の推移をみると、残念ながら米国同様に、「癌征圧」の成果は微々たるものだ。
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癌治療の限界を冷静に見極める |
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治療の成功率は期待するほど高くない!
癌と闘うことは患者にとっても大切だ。しかし、癌治療の限界を冷静に見極めることを忘れてはならない。特に治りにくい癌の場合は、治療の成功率は患者が期待するほど高くなく、治療に伴うマイナスが予想より大きくなりがちだ。
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抗癌剤の副作用は高齢者に耐えにくい
ところが、実際には、再発して治る見込みが薄い人に強い抗癌剤を使っていることがよくある。とりわけ体力が衰えた高齢者は副作用に耐えにくい。率直に説明すれば治療を見合わす患者がもっと多いだろう。副作用と闘うよりも、家に帰って苦痛を取り除きながら自然にまかせるという選択肢もあることを、医師の方からもっと示してもいいのではないか。
人生の終わりは、いつかはやってくる。かつての肺結核や脳卒中、そして心臓病に代わって、癌が高齢社会を迎えた日本人の代表的な死に方の一つになった。癌と最後まで闘うことも一つの選択だ。しかし、癌と無理やり闘わないで最後まで付き合ってゆくというのも、現代における積極的な生き方ではないだろうか。死が避けられないとしたら精神的・肉体的な苦しみをできるだけ和らげることも医療の大切な仕事だ。癌による痛みの緩和技術の普及や住宅ホスピス、在宅介護の充実を、高齢癌死時代と共存するための重要な戦略として、市民も医療側も見なおして欲しい。
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