「便秘の実態」を知り
危険な便秘を早めに察知!

平賀容子・日産玉川病院:便秘と東洋医学(東洋医学だより)から

 

  近年、食事の欧米化(高脂肪・低繊維)で、便秘になる人が増え、同時に、直腸癌や結腸癌に罹患する人が急増しています。皆さんのまわりでも、直腸癌や結腸癌で手術した人は少なくないはずです。
  便秘と活性酸素の関係は寡聞にして知りませんが、便秘の人にSOD様作用食品を摂取してもらうと、ほとんどの人の便秘が改善されています。

 

「便のできるまで」 と 「排便の仕組み」

 
■ 便秘は排便の回数ではなく内容が問題
  日常「便秘」という言葉をよく使い、一般に、2〜3日排便がないと「便秘気味だ」という人が多いようです。しかし、2〜3日に一回、気持ちの良い排便があれば、便秘とはいいません。一方、毎日排便があっても、便が残っている感じや、お腹が張っている感じがする場合は便秘です。
  排便の回数だけが問題となるのではありません。内容も重要なのです。医学的には、「3日以上排便がなかったり、毎日排便があっても、自分が満足できる状態ではない場合」を便秘症といいます。
 

 

便のできるまで

 

 
  口から入った食べ物は、歯で噛み砕かれ唾液と混ぜ合わされて、胃に送り込まれます。胃では胃液と混ざりあって、一部が消化され、十二指腸へ送られます。十二指腸では胆汁と膵液の働きで、栄養素の大半が吸収されやすい形になります。そして、表面積がテニスコート2面分もある小腸で、活発に吸収されます。吸収されずに残ったカスが便の材料となるのです。この段階では、便はまだ液状です。
  この液状の残りカスは盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸の順で大腸をゆっくり通過する間に少しずつ水分が吸収され、さらに腸の粘膜がはがれ落ちた物や腸内細菌の残骸などが加わり、徐々に固まって便らしくなるのです。こうしてできた便は直腸に貯められ、一定の量になると便意が起き肛門から俳泄されます。
 

 
 

排便の仕組み

 

 
  体には、排便を促すしくみがいろいろあります。それらをみてゆきましょう。
 
 
@ 起立結腸反射
  朝、目覚めて起き上がると、大腸が動き出します。
 
 
A 胃結腸反射
  胃に食べ物が入ると、大腸が動き出します。この反射は、朝に一番強く起きるため、朝食後にトイレに行く人が多いのです。便秘の人は、朝食をしっかりとったり、朝水を飲んで、この反射をうまく利用するとよいでしょう。
 
 
B 直腸結腸反射
  便が直腸にたまり直腸の壁が刺激されると、大腸の働きが活発になります。
 
 
C 脳への伝達
  直腸に便がたまると、「便がたまったよ」という情報が脳に送られ、便意を感じます。
 

 
■ 便意を我慢せず排便反射を利用して改善

  便意を感じた時に、排便を我慢するとこれらの反射は起きにくくなり、徐々に便秘となってしまいます。
  便秘解消には、反射をうまく利用し、反射が起きやすくすることが大切です。

 
便  秘  の  種  類

 
  一口に便秘といっても、いくつかの種類があり、治療法があり、治療法はそれぞれ異なります。便秘を解消するには、自分がどのタイプかを知っていなければなりません。

 
 
@ 急性の便秘
  a 一過性単純性便秘
 
  b 症  候  性  便  秘

 
 
A 慢性の便秘
  a 常  習  性  便  秘
       1.結腸性便秘
       2.直腸性便秘
       3.痙攣性便秘
 
  b 症  候  性  便  秘

 
@   急   性   の   便   秘

 
 
a 一過性単純性便秘
  旅行など環境が変わった時や食べる量が、少ないと起こる便秘です。原因が取り除かれれば、すぐに治ってしまう一時的なものです。

 

 

 
 
b 症候性便秘
  何かの病気が原因で起きる便秘です。多くの場合、激しい腹痛や吐気を伴ないます。腸閉塞で腸管が塞がれた時などに起こり、放置すれば命にかかわる便秘です。

 
A   慢   性   の   便   秘

 
 
a 常習性便秘
  慢性便秘の中で最も多いものです。常習性便秘は慢性便秘のうち、器質的な原因のないものを指しますが、さらに次の三つに分かれます。
 

 

 
 
b 症候性便秘
  急性の場合と同じく、病気が原因で起こる便秘です。具体的には次の様なものがあります。

 

1.結腸性便秘
  腸の動きが純いために起こる便秘で、弛緩性便秘とも呼ばれてます。お年寄りに多く、体力の低下している人や、やせ型の人でもみられます。便秘以外に、頭痛・肩こり・冷え・だるさなどを伴なうこともあります。便秘の多くはこのタイプです。便は太くて硬いのが特徴です。
 
2.直腸性便秘
  先ほど排便の反射で述べたように、直腸に便がたまると便意が生じます。しかし、時間がないからとトイレに行かなかったり、痔痛のために排便を我慢することが続くと、神経が純くなります。
  そして、便がたまっても、腸の運動が起きにくくなります。浣腸を繰り返し使っても、神経が純くなってしまうようです。排便後にも残便感があります。また、便が腸内に長時間停滞し、水分が吸収されて硬くなり、量も減少します。
 
3.痙攣性便秘
  腸の動きが強すぎて痙攣がおこり、便が通りにくくなる便秘です。慢性便秘の中で、最もややこしいものです。過敏性腸症候群の便秘型とも呼ばれ、便秘と下痢を繰り返す人もいます。精神的ストレスが強く関係しています。精神的ストレスが強く関係しています。便は硬くコロコロし、兎の糞状です。

 

 

 @大腸癌などで腸管が狭くなり、便が通りにくくなります。
 
 A子宮筋腫・卵巣嚢腫・その他の腹部腫瘍が腸管を圧迫、便の通りが悪化します。
 
 B虫垂炎の手術後などに生じた癒着が、便の通りを障害します。
 
 C大腸ポリープも、便の通りを障害します。
 
 D大腸憩室炎(大腸の壁に憩室という袋のできる病気)で、袋に便などたまって、炎症を繰り返すと腸管が細くなって便が通りにくくなります。

 
危  険  な  症  候  性  便  秘

 
  原因のはっきりしている急性の一過性単純性便秘や慢性の常習性便秘は、原因を取り除いたり、日常生活の改善により解消し、あまり心配はいりません。
 

■ 症候性便秘に注意
  症候性便秘は、急性・慢性を問わず、放置すれば命にかかわることがあります。急性の場合は、嘔気・吐気などの激しい症状を伴いますので、放っておくことはないと思います。しかし、慢性の場合は徐々にきますし、便秘以外の症状もあまりでないので原因の発見が遅れがちです。発見された時にはかなり進行して、手の付けようがないということも少なくありません。
 
■ 特に大腸癌が問題
  要注意は大腸癌です。大腸癌の初期には、自覚症状がほとんどありません。また、大腸癌にかかる人が非常に増えており、今世紀中には癌のトップである胃癌を抜くとさえいわれています。
  しかし、大腸癌でも早期であれば治る率も高くなっていますので、便秘がちな人は精密検査を受けておきたいものです。
 

■ 便の注意深い観察を
  大腸癌の早期発見には、便を注意深く観察することも大切です。大腸癌では便に血が混じることが多くあります。参考までに、大腸癌の血便の特徴を列挙します。
 @便の色が黒いor赤黒くドロッっとする
 A便表面の血や、便と血が混在する
 B便に粘液がついている
 C便の形が細い、あるいはいびつである
  しかし、大腸癌でも場所によっては、鮮血となることもありますし、あまりはっきりした血便のでないこともあります。また、消化性潰瘍・ポリープなども消化管疾患による出血も便の色が黒くなります。この様な便だったら大腸癌を疑うとか、疑わないとかはいえません。血便がでたら、少し詳しく検査をしてもらおうという気持ちでいるのがよいでしょう。
 
■ 便秘の人の痔出血に要注意
  要注意は、消化器疾患のある便秘の人で血便がでた場合です。悲惨な例は、痔の患者が大腸癌の出血と勘違いして、癌が見つかった時には、すでに末期で処置なしというものです。
  便秘の人は痔になりやすいし、痔になると出血を伴います。痔の人は大腸癌にならないという保証はありまさん。