食欲不振や慢性肝炎などに使われる漢方薬「小柴胡湯(しょうさいことう)」の副作用の疑いで、1994年1月以降88人が間質性肝炎を起こし、うち10人が死亡していることが厚生省の副作用報告で1日、分かった。漢方薬の売り上げの3割近くを占める薬で、医師が安易に使っている恐れが強いとみられ、同省は異常時には投与を中心するなどの「緊急安全性情報」を医療機関に流した。薬局などで、風邪薬として売られる一般用からは副作用の報告はないという。
同省によると、小柴胡湯は江戸時代がら使われている漢方薬で、7種類の製薬からなる配合剤。76年から慢性肝炎などに効くとして医療用として使われている。
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小柴胡湯による肺炎で吸収不全から死亡
しかし、94年前期に、頭蓋骨骨折で入院中に慢性C型肝炎と診断された69歳の男性が同薬を投与され、3週間後に発熱などを伴う間質性肺炎を起こし、約4週間後に呼吸不全で死亡したのをはじめ、同年1月以降、いずれも入院中か通院中の10人が死亡していた。
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小柴胡湯で様々のケースで副作用死
同薬は、91年に間質性肺炎の副作用が指摘された。92年にはインターフェロンとの併用による副作用症例が増加、この間に副作用の疑いのある死者が9人出たことから、94年1月に、インターフェロンα類との併用が禁忌とされていた。しかし、その後も、併用ではないケースでも副作用報告が続き、死者も出たことから、改めて安全性情報を流すことにした。
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小柴胡湯は確率は低いが副作用は起きる
同省は「この漢方薬は確率は低いが、副作用は起きる。起きたときに必ず適切な治療を受けてもらうための注意」としている。
肝臓病患者の集まりである日本肝臓病患者団体協議会の高畠譲二事務局長は「ほとんどの患者は副作用について事前に説明を受けている例は聞いたことはない。漢方薬は安全という神話が広く流れ、医師が安易に使っていたのではないか」と話している。
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