インターフェロンには特にご注意下さい
丹羽靭負・土佐清水病院長著:「クスリで病気は治らない」(みき書房)から

 

最近問題になったインターフェロンの薬害

 
  肝炎やC型肝炎には有効な治療薬がまったくないことを説明しましたが、最近、このC型肝炎(B型にも)に、インターフェロンという「クスリ」を注射し、これが全国的な傾向となってきました。
 
■ インターフェロンの副作用は多様で強
  この注射、先ず打たれた患者さん、現場の医師・看護婦さんは一目瞭然にわかることですが、熱は出るは、髪毛は抜けるは、血液の大切な白血球、血小板はやられるは、臓器のいずれかはやられるは、果ては、注射後、強い倦怠感を訴えたり体質が変わってリウマチなどの膠原病が発生したり、一般の化学薬品の中でも超トップの「問題新薬」であります。
 
■ 副作用が使用直後から続々発生した!
  一般に新薬の薬害は、極端にひどいものでない限り、使用され始めて10〜15年経ってから、副作用で○○人死亡したなどとまとめた報告が出て、一般の皆様がその危険性に気付くことが多いのですが、何とこのインターフェロンは、一般病院でどんどん使用され始めてわずか2年ぐらいの歴史しかないにも拘らず、3年前の夏だったか視神経がやられて視力障害、目が見えなくなったことが新聞の社会欄に出たかと思うと、2年前の10月4日、『毎日新聞』は、関西地方では第一面に、インタフェロンと同類の化学物質でTNFという抗癌剤の新薬の使用認可願いが厚生省に出されていましたが、この抗癌剤(インターフェロンもTNFもサイトカインといって、体内で菌やウイルスや癌との戦闘状態に入った時にのみ分泌されてくる物質です)は、新しい癌を作り出すというショッキングな実験結果が、埼玉国立癌センター(藤木教授)から癌学会で発表されたことを大々的に報じました。
  次いで、平成5年2月になって広島のC型肝炎の男性が、インターフェロンを注射されて、下股の末梢神経麻痺を起こし、歩行困難になり、治療に当たった広島の病院と製薬会社を相手に訴訟を起こしたことが、全国のラジオ、テレビ、新聞で報じられました。さらに、去年の12月12日『朝日新聞』に、インターフェロンの注射後、心臓がやられて死亡した患者さんの記事がでました。
  最後に再びインターフェロンの副作用のニュースを一つ申します。この本の原稿の最終校正を行っていた平成7年9月に、またまた新聞に、インターフェロンの注射で糖尿病が発症・悪化した症例が、最近の調査で61件あり、中には、糖尿病性の昏睡という最悪の症状に陥った患者さんもいたので注意するようにと、9月14日、厚生省は使用上の注意を改め、インターフェロンの注射をするのに慎重な配慮を喚起した、という記事が掲載されました。
 
■ 際限のないインターフェロンの薬害発表
  このように続々と発表されていく厚生省の報告を見ていますと、インターフェロンによる薬害発表は、一体いつまで続くのか、際限なく、次々と続いていくのではあないかと、まったく恐ろしく思われます。

 

 
インターフェロン薬害に後手での厚生省対策

 
  ところが、C型肝炎の患者さんに、病院の医師が厚生省認可のインターフェロンを打とうとすると、このような事故の連続のため、患者さんが不安がり拒否したりするため、現場の医師が困り始めて、厚生省としても一度認可した注射薬がこれだけ問題になっては≠ニいうので、『インターフェロン調査委員会』なるものを作り、一応インターフェロンに関係している一部の学者さんなどを集め、数ヶ月かかって調査報告をさせ、その報告結果が、昨年(平成6年)の3月10日頃だったかに発表されました。その報告によりますと、わずかの事故があり、少々の問題は残すがインターフェロンは打ち続けても安全性には問題ない≠ニいう結論でした。そして、地元の『高知新聞』も新聞の二面を全部使って、厚生省の報告を大々的にバックアップし、インターフェロン賛成、推進の記事を載せ、難治と言われたC型肝炎患者に、長い冬の時代から急に春が訪れたような喜びを文面に表現しました。
 
■ 2週間も経たないのに警告宣言を出す!
  ところが、ものの2週間も経つか経たない、3月22日、何と安全宣言をしたばかりの厚生省は、今度はインターフェロンを打った患者のうち、調査で判っただけで32名がうつ状態になって自殺を図り、そのうち3人が自殺で他界したので、注射にはよほど注意するようにと警告を行い、この記事が全国版の『朝日新聞』、『毎日新聞』、『読売新聞』などで大々的に報じられました。
  うつ病になって自殺を図った人が32名もいるのなら、うつ病の精神病にかかった患者(自殺を図らなかった人々)は何百人否、何千人いるか判らないということです。

 

 
肝炎に対するインターフェロンの効果の現実

 
■ C型肝炎の約9割が肝硬変OR癌化で死亡
  C型肝炎の約9割(B型肝炎はその30〜40%)が15年、20年で肝硬変になり、数年後死亡するか、あるいは癌化して死亡します(ただし、B型肝炎はC型と違って最後に肝癌になって死亡する人は少なく、肝硬変で死亡します)ので、絶対にインターフェロンに反対しなさいとは申しません。
 
■ インターフェロンの90%以上に副作用!
  B型、C型肝炎にインターフェロンを使った場合に、あえて急性期の患者さんに使ったとしても、非常に成功率が低いのです。100歩譲ってインターフェロンを使用した場合、90%以上(一度、注射で良くなったが、再発した患者さんの数も入っています)の患者さんが治癒せず、治療を続けていると逆に副作用の弊害を被ります。従って、極く少数の治療した患者さんを除いて、大半の患者さんは、インターフェロンを使わなければ、15年、20年で肝硬変→肝臓癌になって死亡していたものが、インターフェロンを使ったために10年〜12年、13年で死亡してしまったというショッキングな統計が、インターフェロンを大々的に使い出した10年、15年先の統計として出てくる可能性が非常に強いのです。

 

 
インターフェロンに同意する場合の大切な条件

 
■ インターフェロンで改善した患者は少数
  私は現在何百人ものB型、C型患者さん、肝硬変、さらに肝臓癌の患者さんをかかえておりますが、その中でかなりの患者さんがインターフェロンの注射をしておられ、冷静にそれらの患者さんを分析してみますと、確かにインターフェロンを打って良くなられた患者さんもおられますが、よくて20人程度であり、副作用でひどい目にあい、なおかつ肝臓が良くならなかった患者さんは2桁どころか、3桁の何百人もの数になっています。
 
■ インターフェロンは初期の急性期には効果的と思われる
  と、言いますのは、先ずインターフェロンを打つには時期がありまして、もし私がインターフェロン賛成論者とした場合、B型、C型のウイルスが感染した極く初期の急性期、即ちまだ慢性肝炎、肝硬変に移行してない初期の時期ですと、効く可能性があります(例えば検査値の中で膠質反応、ガンマグロプリン、4型コラーゲンなどが上昇していない時期)。
 
■ 初期の患者に限っても約3割の患者にしか効果が認められず
  初期に注射しても、全体的に見てインターフェロンが効いたなと思う人は5人中2人で、この効いたなと思う人の中で約8割の人がまた悪くなってきます。従って、本当にウイルス肝炎が治癒した人は極く少数になってしまうのです。
コ メ ン ト : この数値から言えば、初期の患者さんに限っても、2÷5×0.8=0.32となり、32%つまり、初期の人でも、約3割にしか効果がないことが分かります。
 
■ インターフェロンを受けつける際の注意事項
  以上の如くで、B型、C型肝炎は、将来20年先に生命が危なくなる病気ですから、この副作用の強いインターフェロンにかけてみようと思う人にはあえて反対しません。しかし、その成功率は非常に低いということと、前述のように副作用が非常に強く、危険性が非常に高いということ。
  もう一つ、効く場合でも、猫も杓子も効くのではなく、非常に初期の急性期の人であるのだということを頭に入れておいて下さい。

 

 
C型肝炎の人、アルコールにご注意!

 
  C型肝炎患者で、アルコールを飲む人は飲まない人より早く肝臓癌になりやすい。大阪大医学部第一内科や大阪労災病院消化器内科などの研究チームの調査で、こんな傾向が裏付けられた。C型肝炎患者の癌発生にはアルコールが関係していると考えられてきたが、それを具体的な調査で確かめた。
  C型肝炎の感染者で、最近、肝臓癌と診断されたはかりの85人の感染時期や飲酒歴を調べ、1日当たりの平均飲酒量をエチルアルコールの量に換算した。
  その結果、飲酒量が1日平均46c(日本酒360_g<2合>相当)未満の67人は、感染してから癌と診断されるまで平均31年、それ以上の飲酒量の18人では平均26年だった。