C型肝炎のインターフェロン治療
患者3割に無効(実際は約5割に無効)
医療経済研究機構:朝日新聞(96-12-13)から

 

 
  国内に100万人から150万人といると推定されるC型肝炎患者に対するインターフェロン(IFN)療法は、強い副作用のもかかわらず患者の約3割には原因ウイルスをなくす効果がなかったとする報告書を、厚生省の外郭団体でシンクタンクの医療経済研究機構がまとめた。C型肝炎を起こすウイルスの型と治療効果を分析したもので、報告書は、事前のウイルスの型検査でINFが有効かどうか分かるようになったと指摘、適切な使用をすべきだとしている。
 
  報告書は医療経済研究機構の森口尚史・調査部長を中心に、東京医科歯科大の佐藤千史教授らがまとめた。同大病院など多くのC型肝炎患者を診ている5施設のデータを分析。

 
C型肝炎のある種にはIFN療法は無効

 
  最新の研究を基に患者の経過を調べたところ、6種類のC型肝炎ウイルスのうち「1bの野生型」には、現行のIFN治療が全く効果がないことが分ったとしている。IFNを投与するといったん消えたウイルスが、6ヵ月後には患者の血液中から再び検出されたためだ。

 

 
無効なIFN療法に多額の医療費を投入

 
  INF療法は、血液中から肝炎ウイルスを完全に消し去る効果が期待され、1992年の健康保険適用以来、推計10万人が受けた。製薬業界によると、IFNの売上は92年から93年にかけて、約1800億円にものぼった。
  「1bの野生型」ウイルスの患者は約3割おり、こうした患者へのIFN投与をやめると、INF療法の医療費も3割以上節約できるという。
  「副作用と経済的負担が大きいばかりなので、少なくとも再投与は見送るべきだ!!」報告者の主任研究員である森口調査部長(臨床疫学)は「こうした患者へのIFN療法は、副作用と経済的負担が大きいばかりなので、少なくとも再投与は見送るべきだ」と話している。

 

 
厚 生 省 医 療 課 の 話

 
■ 保険適用見直す方法
  ウイルスの型が重要との報告が学会で相次いだため、検査の一部は今年5月から保険適用にした。初回のIFN投与量が不十分だったなどの理由でウイルスが消えなかった場合について、再投与にも保険適用を求める要望が強く、適用を見直す方向で検討中だが、こうした報告書や学会の合意などを参考にしていきたい。

 

 
C 型 肝 炎 と I F N 療 法

 
■ C型肝炎ウイルスと肝癌
  C型肝炎ウイルスに感染し慢性肝炎になった患者は、約3割が肝硬変になり、うち約7割が肝癌になるといわれる。昨年、国内で肝癌で約32000人が死亡、うち8割がC型肝炎ウイルスによるものとみられている。
 
■ IFN(インターフェロン)療法
  IFN療法を受けると、ほとんどすべての患者が発熱するほか、頭痛や全身のだるさ脱毛食欲不抜不眠などの副作用が高率に現れる。