糖尿病による血管障害
松岡健平・東京都済生会中央病院内科医長:「糖尿病で血管に障害が出るとき」(日本放送協会)から


 

高血圧が直接原因となる網膜症と腎症

 
  高血糖が直接原因となって起きるのは、網膜症(眼底出血)と腎症(尿毒症)です。この二つは、細小血管症と呼ばれ、毛細血管など細い血管に障害が生じて起きます。この血管障害は、血液中にブドウ糖が大量になり、血管の内側に付着、壁を厚くしたり、詰まらせたりします。
 

 

網膜症(眼底出血)

 

 
  網膜症になると、最悪の場合には失明します。本症により、年間5000個もの目が光を失っています。本症は、ある時点で、急に悪化することが多く、これは眼底の細小血管が大出血することや、網膜剥離により起こります。糖尿病にかかった場合には、糖尿病による網膜症の眼底検査に慣れている眼科医で、定期的な検査をしましょう。
 

 

腎    症(尿毒症)

 

 
  腎症になると、尿毒症になって生命に危険を生じたり、人工透析が必要になります。本症では年間3500人が人工透析を必要とするようになっています。腎症は、血液を濾過して尿をつくる役目の腎臓の膜の血管が障害されて起こります。腎臓の機能がうまく動かなくなり、その結果、尿毒症になってしまうのです。

 

 
糖尿病性の動脈硬化による血管系病変

 
  糖尿病では、細小血管以外に太い血管でも、脳卒中心筋梗塞下肢動脈閉塞(脱疽)などを発症します。
  高血糖状態が続くと、血液の成分である血小板が凝縮しやすくなり、これが太い血管の壁について固くなったり、太い血管に栄養を送りこむ細小血管に障害が起きるために、その機能が落ちるなどの影響があります。つまり、直接の原因にはならなくても、糖尿病は動脈硬化を促進させる因子になっているのです。
  事実、糖尿病の患者さんが脳卒中や心筋梗塞になる割合は、健康な人の2〜4倍にものぼっています。
※最近では、インシュリン過剰が動脈硬化を促進すると、いわれています。