「ストレスで虫垂炎になる」のは
白血球の好中球(が活性酸素を出す)が関係

坂本正明・朝日新聞科学部次長:朝日新聞(95-09-20)から

 

  この春、東京本社から大阪本社へ転勤になった同僚の女性記者が、夏に帰京した際、急性虫垂炎で入院した。関西での生活は初めてだし、単身赴任。
  仕事の内容も変わったのでさぞストレスも大きいだろう。しかし、ストレスで盲腸になるものだろうか。「そりゃ、十分考えられますよ」というのは、新潟大医学部の安保 徹教授(免疫学)。
  ストレスがかかると、交換神経が緊張し、白血球の代表格である「好中球」が増える。好中球は、体内に侵入してきた細菌などの異物を取り込んで消化する働きがあり、生体を守る重要な役割を担っている。

 

増えた好中球が活性酸素を出し胃潰瘍や虫垂炎に!

 
  この好中球が増え過ぎると反応性に富んだ活性酸素を多く出し、組織を痛めつけるのだ。ストレスで胃潰瘍になることはよく知られている。学会発表の準備で徹夜した翌日、虫垂炎になる研究者もけっこういるそうだ。

 

 
高気圧になると虫垂炎になりやすい!

 
  意外なことに、虫垂炎は高気圧とも関係があるという。「天気がよくなると、虫垂炎の患者がきてゴルフの練習に行けなくなる」という県内の外科医の話に興味を覚え、安保教授は自動気圧計を買い込んだ。
  そして一ヵ月間、自分の血液を採って、好中球の数と気圧の関係を調べてみた。すると気圧が高くなると、好中球は確かに増えていた。
  なぜか、動物は好天のものとではエサ取り行動に励む。手足に傷を負う恐れがあるので、好中球を増やして細菌などの侵入に備えると考えれば、つじつまが合うという。