活性酸素は「悪玉」!?
害を抑えることでガン予防にも

酒井 豊・防衛医科大学名誉教授:産経新聞(95-12-04)から

 

活性酸素は酸素毒、成人病や老化の原因

 
  中高年になったら、「健康は自分自身が努力してつくりだすものだ」との意識を持ちたい。そのための知識の一つを。
 
■ 活性酸素や過酸化脂質は、成人病や老化の原因に関係する!
  フリーラジカルとは、化学的に不安定な原子や分子をいいますが、その代表が活性酸素や過酸化脂質。最近、成人病や老化の原因としてかかわっていることが分ってきました。
  活性酸素は空気中から吸った酸素が生命維持に必要な代謝を営むためのエネルギーをつくる過程で、不完全に化学反応したときに生じる産業廃棄物ともいえる酸素毒。体内のいたる所で作られます。
 
■ 活性酸素は細胞膜を破壊、発癌に関連!
  どのような機序で障害をもたらすかは、すべて明らかではありませんが、悪の代表的な作用は細胞膜の破壊です。このことは、核のDNA(遺伝子)を変異させて発ガンのきっかけをつくる可能性があるとされています。
 
■ 過酸化脂質は、老化・成人病の原因物質
  活性酸素は、膜を構成する脂質を酸化させて有害な過酸化脂質を生成します。この過酸化脂質が積み重なるにつれ、身体機能の老化動脈硬化白内障など多くの成人病疾患の引き金になる危険、「老化・成人病過酸化脂質原因説」すらあります。
  生体には活性酸素を発生させない、また消去する防御機能が備わっていますが、過剰発生や加齢など防御力の低下による不均衡があるのでしょう。ですから、活性酸素の異常な発生を少しでも抑えることが大事です。問題になる主なケースは表のような場合です。
  これらとは反対に、活性酸素の害を抑えることは発ガンのリスクを減らすことにも、また過酸化脂質の生成を抑制することにもつながります。


活性酸素の過剰発生要因
 

@ 強い紫外線や放射線に当たりすぎる
  ※細胞が大きなダメージを受け、シミ・ソバカス・皮膚癌などにつながる
A 二日酔い
  ※アルコール代謝物の分解過程で、活性酸素が過剰に発生
B タバコの吸いすぎ
  ※ニコチン、一酸化炭素の毒性消去の過程で、また血管が収縮するために発生
C ストレス
  ※血管が収縮(虚血)し、緊張がとれると血流が回復(再還流)し、発生
D 炎症や傷は早く治す
  ※局所に白血球が集まり、活性酸素の過剰発生もある
E 過度の運動
  ※活性酸素生量を増大、悪玉LDLコレステロールを酸化して動脈硬化の基に
 


 

 

活性酸素の発生予防に適度な運動とビタミン(抗酸化剤)の摂取

 
■ 適度な運動は動脈硬化や心筋梗塞を予防
  日常生活の中に取り入れた方がよいのは、年齢に応じた適度な運動です。適度な運動は、免疫能を高めたり、内臓脂肪を減らしたり、善玉のHDLコレステロールを上昇させ、動脈硬化や心筋梗塞を予防します。
 
■ ビタミン・抗酸化剤は、活性酸素を消去
  活性酸素を除去する抗酸化作用を持つビタミンE・C・B2を適切に摂ることです。Eが主役ですが、CあってのEの働き、またEは過酸化脂質の生成を抑える作用、B2は過酸化脂質を分解する酵素の活性を強める作用もあり、三つを組み合わせれば補い合って、より強い相乗効果が期待できます。また、βカロチンの緑黄食野菜や寒天、ひじきなどの食物繊維を取り混ぜて食することです。
 
■ 日数が経過した脂肪分の多い食物に注意
  避けたいことは、日が経ち、太陽や空気に長くさらされて過酸化した油や干しものや加工食品などの脂質を大量に食べると、小腸粘膜下にあるリンパ組織が障害されることもあり、免疫能や抗腫瘍作用や感染防衛力の低下につながり得るとの指摘もありますので注意したいと思います。