高齢者のリスク
1.高齢者は感染しやすいというのは本当ですか?
「高齢者が新型コロナウイルス感染症にかかると、一般の人よりも重症化しやすいというデータはあります。しかし、高齢者が一般の人に比べて新型コロナウイルスに感染しやすいというデータは今のところありません。そのため、高齢者も一般の人同様、感染症予防対策をしっかり行っていれば感染しにくくなり、対策を怠っていれば感染しやすくなるといえるでしょう」
2.高齢者が重症化しやすいのはどうしてでしょうか。
また、高齢者が感染したときの症状の経過は一般の人と違うのでしょうか?
「新型コロナウイルス感染症だけでなく感染症にかかった場合、65歳未満の人と比べて高齢者のほうが重症化しやすい傾向にあります。高齢者の感染症が重症化しやすい明確な理由は分かっていませんが、加齢による免疫機能の低下や栄養の問題などが複合的に関係していると考えられます。新型コロナウイルス感染症の場合、高齢者は重症化するリスクが高いため強い倦怠感や息切れなど気になる症状があれば早めに病院の受診を検討する必要があります」
3.高齢者の中でも特に重症化しやすい人には何か特徴があるのでしょうか?
「高齢者のなかでも特に新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいのは、喫煙習慣のある人や基礎疾患(持病)のある人です。特に以下のような病気にかかっている人は、重症化しやすいと考えれます。糖尿病、心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、高血圧症など。また、ニューヨークなどの例を見ていると、経済的に困窮している人のほうが栄養状態や衛生環境などの理由により新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいようです。高齢者がそのような環境に身を置いていると新型コロナウイルスに感染しやすく、感染後に重症化しやすいことが懸念されます」
4.高齢者が重症化して亡くなる確率はどのくらいでしょうか?
「80代以上の新型コロナウイルス感染症による死亡率は10%程度といわれています。65歳未満の人の死亡率が、地域差はありますが平均的に見て1%未満と考えられているので、高齢者のほうが一般の人よりも死亡率が高いと考えられます」
5.高齢者が受診する目安は?
「高齢者の場合、37.5℃以上の発熱や風邪の症状が出てから2日程度で受診を検討しましょう。一般の人の受診目安はこれらの症状が4日以上続く場合(個人差があるので息苦しさなどがある場合は受診を)となっていますが、高齢者の場合、重症化するリスクが高いことを踏まえ、発熱とともに息切れが急に出てきたり、強い倦怠感があったりする場合には早めの受診をおすすめします。受診を検討する際は、直接病院に行くのではなく帰国者・接触者相談センターに問い合わせて指示を仰ぐか、かかりつけ医に相談しましょう。また、高齢者であり、かつ基礎疾患を持っている場合には重症化するリスクがさらに高まるため、状況に応じて症状が出てから2日を待たず、受診しましょう」
6.感染予防として日常生活で高齢者はどうすればいいでしょうか?一般に人比べて特に注意することは?
「予防に気をつけることは高齢者も一般の方も同じです。まず、三密を避けること。三密とは密閉、密集、密接を指し、人が集中して集まることですから、そのようなところに行くころは控えましょう。やむを得ず行かなければならないときは、マスクとできれば目を守る花粉症用のメガネなどを着用しましょう。そして、外出後や食事の前など、こまめに手を洗うことを心がけましょう。手洗いは石鹸を使用し、手のひらや甲だけでなく指の間や爪の先なども入念に洗います」
7.基礎疾患を持っている高齢者のなかには通院する必要がある人が多いと思います。
通院時に気をつけることは?
「マスク、手洗い、消毒などの感染症対策を徹底したうえで、今までどおり通院してもかまいません。特に基礎疾患に関する症状などが出ている場合は通院を控えることはしないで、かかりつけ医を受診しましょう」
8.定期的な通院が必要な高齢者や薬の処方が必要な高齢者に対して、
医療機関ではどのような措置を行なうのでしょう?
「2020年4月13日より電話やインターネットなどを用いたオンライン診療が行なえるようになり、病院に足を運ばずに受診るることが可能となりました。オンライン診療では通院の必要がなくなるので感染者と触れる機会がなくなり、感染の心配がありません。ただし、すべての方がオンライン診療を行なえるわけではなく医師の判断のもとオンライン診療で診断や薬の処方が可能であるとされた場合など、条件を満たせば行なうことができます。オンライン診療を希望する場合は近くの医療機関、またはかかりつけの医師に相談するとよいでしょう」
9.高齢者や高齢者施設にいる人は、日常の生活でどのような対策をとるといいでしょうか?
「意識的に体を動かすようにしてほしいです。高齢者の場合、新型コロナウイルス感染症にかかって重症化してしまうことも恐ろしいのですが、感染症対策として外出しないことによって体を動かさなくなり、フレイルになってしまうことが懸念されます。フレイルとは加齢によって運動機能や認知機能が落ち、心身共に弱ってしまうことをいいます。フレイルになると転倒・骨折が増え、最終的に寝たきりになってしまう人もいます。ただ、感染症を予防するために三つの密を避ける必要があります。しかし、これは外出してはいけない≠ニいうことではありません。そのため、感染症対策を行なったうえで外に出て散歩をする、軽い運動をするなど体を動かすことを意識してみましょう。また、天候・体調などの影響で外に出るのが難しい場合には、自宅でできる運動を取り入れ、座ったまま・寝たままでいる時間を極力減らしましょう」
10.新型コロナウイルスの感染拡大によって高齢者における影響は何があると予測しますか?
「外出しなくなることによりフレイルになることが懸念されます。フレイルになってしまうと、これまで自分で日常生活を送れていた人でも運動機能や認知機能が落ち、介護が必要になってしまうことがあります。高齢者の場合、一度弱った運動機能や認知機能をもとに戻すことはなかなか難しいため、外出の難しい今の時期でも、継続的に体を動かすようにしていただきたいです」
今も刻一刻と感染拡大や医療現場の状況が変化し、これから季節がまたインフルエンザなどの感染症が増える冬に向かっていく懸念もあります。私たちにできることは限られますが、SODで免疫力をつけ、みなさまくれぐれもご自愛ください。
|