医者としての最高の喜び

  ―――剛士くんは、先生の心のなかに、いつも生きておられるんですね。
  丹羽  剛士のことは、亡くなって片時も忘れたことはありません。いまでも同じ白血病の子を診断するとき、また、外を歩いていて小学生の男の子と父親が仲良く手をつないで歩いている様子をみるとき、胸を締め付けられるような悲しみに襲われます。それはぼくが一生背負い続けなくてはならない心の十字架です。
  振り返れば、ぼくの医者人生は剛士の弔い合戦でした。ぼくは日曜も祭日も盆正月もなく全国の診療所を飛び回っていますし、まったくの無趣味で、ゴルフの球をどう打ったらいいかも知らない男です。多くの人たちから、よく「先生の生き甲斐は何ですか」と聞かれることがありますが、ぼくにとっての生き甲斐、楽しみとは、余命三ヶ月と言われた末期がん患者さんが、ぼくの副作用のない自然回帰の治療法で、抗がん剤の副作用のような苦しみを味わうことなく見事に命拾いをして延命されることです。学校で辛いいじめにあっている重症アトピーの子供さんをきれいにして学校に通わせてあげることです。月に何十通と送られてくる家族からの感謝の手紙を読むことは、ぼくにとっては娯楽によって得られる喜びの何百倍もの喜びなのです。