病気予防は第一に日常健康管理、次いで「SODロイヤル」
健康の管理には、病気に関する知識が欠かせません。本シリーズでは、さまざまな症状と病気との関連を掲載し、読者の方が適切な治療の機会を逸することなく、早期の精密検査をするための資料を提供いたします。 |
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昨年の春。「便に血がついている」「排便後もまだ便が残っているようだ」という症状が気になって、50代のFさんは平田肛門科病院(東京・港区)を訪ねた。 |
Q1… 一般の人は「直腸癌による出血」を「痔による出血」と勘違いすることは多いのですか? |
A…医者が患者の直腸に指を入れて、直腸を実際に触れて異常なシコリなどがないか調べる直腸診で、進行した直腸癌が発見された。運よく経過は良好だという。 「患者さんたちは、痔だと思い込もうとされます。実際、痒(よう)の気のある人には、痔のケースが多いんです。が、そうではない、患者さんたちがそれであってほしくない≠ニ願う直腸癌をも含めた大腸癌のケースもあるのです」と平田肛門科医院の平田雅彦院長(43)はいう。つまりFさんのようなケースである。 |
Q2…直腸癌や大腸癌の検査では、便潜血反応や直腸診だけで大丈夫? |
A…平田院長は以前に次のような調査を行った。受診した患者217人に直腸と結腸の内視鏡検査を行い、出血と癌との関係をみた。受診者には問診表に答えてもらい、便潜血反応も行った。結果は、9人に癌が発見され、30人に癌を除くポリープが発見された。 |
Q3…「切れ痔」について、発症例と改善方法を説明して? |
A…20代のOL、A子さんは以前から便秘気味。ゴールデンウィークを友達3人でグアム島へ。ところが、環境がかわったことも手伝ってか、普段は3日に一度は排便があるのに、このときは4泊5日、全く排便がなく、おなかがなんとも重苦しい。 |
Q4…肛門周囲の「痛み」を伴う病気について説明して? |
A…肛門が痛いという症状からは裂肛、外痔核、肛門周囲腫瘍、痔瘻が指摘される。 【 切れ痔(裂肛) 】 「切れ痔とは裂肛のことで、排便時の痛みや出血、A子さんのような症状が主な訴えです。直腸と肛門管を結ぶところに歯の形をしたように見える歯状線があり、それより上(直腸側)は痛みを感じる神経がないので痛みを感じませんが、それより下(肛門側)には痛みを感じる神経がり、そこが切れるので痛くてたまらないのです。」裂肛の場合は排便時に痛みを伴うのが特徴。 【 外痔核 】 ただ、それが排便時のみならず、1日中痛くなるのが痔は痔でも、やはり歯状線の下(肛門側)もできる外痔核である。 「肛門管にできる血マメです。硬い便をいきんで出そうとしたり、重いものを持ち上げたり野外コンサートなどで冷たいところに座ったりといったことなどが原因でできます。」 【 内痔核 】 同じ痔核でも歯状線の上にできる内痔核は痛みを伴いません。 【肛門周囲膿瘍(のうよう)】 このほか、おできができたように肛門がズキズキ痛むのが肛門周囲膿瘍(のうよう)。連日アルコールを飲み、下痢気味といった不規則な生活をしている人に多くみられる。 「あな痔といわれる痔瘻(じろう)のなりかけです。重症になると38度くらいの熱も出ます。」 【 肛門癌 】 さらにその痛みがにぶく続き、粘液が伴うようであれば肛門癌を考えられる。「ただし、それはごくごくまれなケース」ということである。 |
Q5…肛門周囲の「痒み」を伴う病気について説明して? |
A…「夏場は汗をかいてそのままにしているため、肛門が痒いという患者さんが増えています。単純に汗が原因となっている汗疹(あせも)の部類のほかに肛門管と直腸を結ぶ歯状線の上(直腸側)にできる内痔核や切れ痔(裂肛)が原因となっているケースも多いのです。」平田院長は言う。 【 肛門そう痒症 】 痔にまで進展していなくても、歯状線より上に何らかの炎症を起こしている人は多い。それが痒いという症状をおこしている。「歯状線の上にできた炎症をそのままにしておくと、粘膜がただれてくる。そこを便が1日に1回は通過して行く。」 「便はアルカリ性で、大腸菌をはじめとして細菌がいっぱいです。炎症部分に便をすり込むようなものですから、炎症はおさまらず、そのうち分泌物がでてきてこれが肛門の周囲の皮膚をただれさせます。」 この状態が肛門そう痒症である。基本的な治療としては、肛門周囲を清潔にし、痔を治すように暴飲暴食をせず、規則正しい生活を心がけ、排便もスムーズに行えるようになると、病気は回復していく。 【 蟯虫症 】 そして、忘れられてしまった寄生虫の復活。「有機栽培による野菜がふえてきたこと、海外旅行に行く機械が増えた、といったことが寄生虫を増やしています。夜間、肛門が痒くなるのが蟯虫(ぎょうちゅう)症です。保健所で簡単に検査できますので、蟯虫がいたら薬を服用して駆除すればすぐに治ります。」 |
Q6…「痔」による「痛み」や「痒み」の場合、市販薬の使用上の注意点は? |
A…痔が原因の場合は、専門医の診察を受け、正しい治療にとり込むべきである。 正しい治療と、わざわざ書いたのは、肛門が痒いと訴える患者の中に、市販薬の副作用がでているケースがあるからだ。「ステロイドが入っている痔の市販薬を2週間以上も延々と使いつづけ、肛門周囲の皮膚を弱くし、かぶれて痒くなっている場合もあるのです。」 加えて、専門医以外から痔の薬をもらっている患者にも薬の間違った使用法による痒みが目立つ。やはり専門医の診察を受け、症状に合った薬を処方してもらうべきである。 |
【 便の色と病気 】 血便は痔、直腸炎、直腸癌、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病など横行結腸から肛門にいたる、いわゆる体の左半分にできる大腸の病気。便が黒ずみ、タール便ともなると、右半分の大腸の病気、さらには十二指腸、胃、食道の病気を疑う。またこのほか白い便は脂肪便で、胆汁が何らかの原因で出ていないので、胆のう、すい臓を調べ、緑色便は消化不良なので消化器内科を受診しよう。 【 市販薬の上手な使い方 】 痔の市販薬にはステロイドが含まれているものが多い。これを長期に使用すると、かえって痔をこじらせることがある。市販薬を使う場合は、10日から14日くらいを限度として使うべきである。それでも痔がよくならない場合は近くの専門医へ。市販薬はあくまでもワンポイントリリーフと考えるべきである。 【 お尻を洗う効果 】 排便後、紙でふくのはアルカリ性の便が皮膚をただれさせる原因となる。その点、最近普及が著しいウォシュレットは、肛門周囲の血行もよくし、清潔で、お尻にはやさしい。 外出時に携帯できるシュピューラーという肛門洗浄器もますます人気を呼んでいる、これに食事、運動面で生活改善を行えば、肛門の病気ともおさらばできる日が、どんどん近くなる。
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