症例8:36歳、男性、成人T細胞白血病(ATL)


  1994年成人T細胞白血病と診断され、37.5℃〜38.5℃の熱発を繰り返し、ベプシドも含む色々な種類の化学療法を受け、嘔気、食欲不振、毛髪の脱落などの副作用が見られ、1996年8月までに2度再発が見られた。再発の度に患者の症状は化学療法でコントロールされていたが、1996年8月に副作用のため化学療法を中止し当院の治療を選択することを決め1996年9月来院した。初診時、患者は熱発、咳嗽、脱毛を訴え、腫瘍マーカーのLAP値、白血球数、異型リンパ球の%、CRP、血沈などの増加が認められた(図16)。患者はBG−104を内服し始めて2〜3週間で解熱し、食欲も回復した。内服2週間後には、上昇していたLAPと白血球は正常化し、異型リンパ球も消失した。しかし、10月終わりに再発し図16に見られるように、白血球数8万を超え、LDH3,000、異型リンパ球は91%にも上昇し、ATL細胞も最も多い時は73%を示した。赤血球と血小板の減少が始まり、これらは悪性のリンパ球の増加による crowding out の作用と思われた。しかし、BG−103がBG−104に追加投与されて以来、図16に見られるように改善し始め、この頃より患者は、当院受診前に既に投薬され無効であったベプシド25mgを毎日念の為追加投与された。1997年4月から患者は寛解期に入り、マーカーを含む検査値に異常を示さなくなった。患者は現在も元気に働いており、発症してから既に6年が過ぎている。ちなみに、本患者は6年前の発症時、北海道の函館中央病院・血液内科の主治医にATLの3年生存率は13%と言われていた。


 図16