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『医学常識はウソだらけ』 〜医学の常識が命とりに!〜
三石 巌 分子生物学者 著

 

 
   今回紹介する本は、2001年に単行本として発表された分子生物学者、三石巌先生の著書です。残念ながら先生はすでに他界されていますが、95歳までスキーや水泳を楽しみ、300冊を越える本を執筆されてきました。分子生物学という分野を切り開き、現代のアリストテレスと呼ばれていたそうです。
   この本の紹介に入る前に、聞きなれない分子生物学とはどんな学問なのか、簡単に紹介しましょう。これが、今回の本のキーになります。
   分子生物学というのは、遺伝子生物学のこと。そう言われるとDNAやヒトゲノムなどの言葉がいくつか浮かんできます。つまりは、人間の生命のメカニズムの解明から始まった学問だそうです。この分野の研究が学問として成立したのは1958年とのことですから、ほんの半世紀前。それによって、人は生まれながらにしてどんな病気になりやすいか、ということまで予測できる時代になったのだそうです。それは20世紀後半における科学上の最大の成果と言われています。当然、これらの研究は、医療に活かされているはずなのですが、実は、現場の医者は肝心の分子生物学など少しも勉強していないというのです。すなわち栄養と病気の関係についてはほとんど取り組んでいないというのです。三石先生いわく「要するに、医者は勉強不足なのである。私の健康管理学、栄養を重視しているが、それは生命のメカニズム解明の道を拓いた分子生物学を知ったことが出発点になっている」
   このことは、ゴマの研究など食品学で著名な名古屋大学名誉教授の大澤俊彦先生も「医者は栄養学の専門家じゃないし、その勉強をしているわけではない。だから、間違った食べ物の指導が多々ある」と言います。そして三石先生は、間違った指導によって病気がかえって深刻な状態になっていることが多いと。食べ物などから病気体質を改善することが大事なのに、余計な薬を大量に投与することで違う病気まで発症させ、深刻になっていると言います。
   それはいったいどういうことなのか、本書はそのことを分かりやすく教えてくれています。読み進むうちに、人間の体を病気から遠ざける近道は、決して進歩した医術や医者ではなく、分子生物学、分子栄養学などによる生命のメカニズムなのだと再確認します。
 
   医者の知識、常識は大間違い
 
   まずは本書の冒頭から紹介します。先生は、何年も前からかなり重症の糖尿病をかかえ、還暦の頃には白内障を患い、医者からは数年で失明すると言われたそうです。ところが、分子栄養学によって、30年間、糖尿病も進行せず、白内障で失明もしませんでした。
   「私ほど医者の世話にならない高齢者もめずらしい。私は何年も前から医者にかかれば「カロリーを制限しろ」「甘いものは控えなさい」「運動をしましょう」などと糖尿病の医学知識を押し付けられるに決まっている。私はそんな「常識」をいっさい無視して暮らしている。医者の言うことが正しいのなら、とっくに糖尿病の合併症をいくつも起こしているはずである。ところが私は、これまでなにひとつ合併症を起こしていない。なぜか、答えは簡単。医者の知識が間違っていて、私が正しい知識に基づいた生活を送っているから。
   医者にかからないからといって私が健康管理をおろそかにしているわけではない。科学者として理論的に、正しいと信じる方法で健康を自主管理している。そしてその私の方法と医者が信じている「医学常識」との間には、あまりにも一致しない点が多い。多くの医者がマニュアルどおりに治療をし、それが医学常識として定着してしまうと、誰もそれを疑わない。それが一転して非常識になるとは少しも思っていないのである」
   医者の知識、常識が間違っている。このことはよく丹羽先生も言います。また、帯津良一先生(帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごと捉えるホリスティック医学の第一人者)も「医学は医学で膨大な知識を身につけなければいけないし、毎日、怒涛のごとく訪れる大勢の患者に必死な現場の苦労を考えれば、医者を責めるのは酷なことかもしれないけれど、今の数字しか診ない診療や大量の薬の処方はおかしい」と言います。
   三石先生はそのことを、「だとしたら、現在の医学界全体が問題を抱えていることになる。そしてなによりも、他の医学に対して極めて閉鎖的な医学界の体質を変えなければいけない。分子生物学に対しても大腸菌の研究をしている学問など、人の治療に役立つはずがない≠ニ見下している医学者も多い。
   一方では、製薬会社や医療機器メーカーと結託して私腹を肥やしているような、自分たちの利権を守ることを最優先にしている医者もいる。薬害エイズ事件なども、おそらくはそういう構造によって引き起こされたものだと考えてよい。患者にやたらと薬を出す医者も似たような体質を持っているといえるだろう。医療費の大半が健康保険で賄われていることを考えれば、効きもしない、薬を出す医者を野放しにしておくのは国家的な損失だといえる」
 
   塩分の摂りすぎで高血圧はウソ
 
   では医学常識≠うっかり信じることによって、どんな危険が待ち受けているのか。治療方向性を間違えれば、それこそ命取りになりかねない、それこそ命取りになりかねない、と先生がいう、高血圧、糖尿病といった生活習慣病に対する医学常識のウソ≠ノついて紹介しましょう。
   「これらの病気については国民的関心が高く、そのためにより間違った常識を信じ込んでいる。まず食塩を摂りすぎると高血圧になる≠ヘウソ。高血圧になったらまず塩分を減らせ、という行政の勧告そのものがとんだお笑い草なのである。基本的に高血圧と食塩摂取との間にはほとんど因果関係がない。確かに、食塩の過剰摂取で高血圧になる人はいる。ただし、それが原因になっているケースは、高血圧患者100人のうちたったの一人か二人という割合なのである。高血圧の原因は決して食塩の過剰摂取だけではない。にもかかわらず、画一的なマニュアルに沿った治療しかしない医者は、すべての高血圧患者に減塩を指示する。しかし、そのマニュアルが有効な患者は全体の1、2%にすぎない。残りの98〜99%には効果がないどころか、逆に必要な塩分が不足して健康を損ねてしまう恐れまである。こんな愚かなマニュアルが常識≠ニして日本の医師全体に通用しているから、私は医者を信用できない」
   そんなおかしなことがこの医療先進国日本で常識になっているのは、どうしてなのでしょうか。そのことを三石先生は、疫学というマーケティングリサーチのようなものにあると言います。例えば東北地方に高血圧が多いという調査結果が出ました。その中の、とある県で特に一人あたりの食塩摂取量がかなり多かったのです。そのせいで食塩が高血圧を引き起こす犯人にされてしまったのです。
   「それだけで犯人の結論を出すには性急すぎる。実際、このとき個別に調べたら、食塩の摂取量が少ないのに血圧が高かった人もいれば、摂取量が多いのに血圧が低かった人もいたという。一人ひとりの個体差から目をそらしがちになりのも疫学の抱える大きな問題のひとつである。
   同じ東北地方でも、リンゴの生産地では高血圧が少なかった。が、この事実は研究者にとって都合が悪いので例外として切り捨てられた。リンゴをたくさん食べている人が高血圧になりにくいことは、栄養学的にも裏付けられている。血圧を平常に保つためには、食塩により摂取されるナトリウムと、カリウムというミネラルの比率が重要である。カリウムはリンゴ、メロン、スイカ、バナナといった果物や野菜に多く含まれる。ということは、高血圧のひとつの原因は、食塩の過剰摂取ではなく、カリウムの不足といったほうが正しい」
   つまり、高血圧には、体に必要な食塩を極端に減らさないで、カリウムをちゃんと摂ることが重要だということです。こんなこと、医者は誰も教えてはくらません。ほとんどは、減塩と血圧降下剤の処方ではないでしょうか。
 
   糖尿病、血糖値が高くても恐くない
 
   「薬には副作用がつきもの。仮にその薬が症状を和らげる効果があっとしても、それによって別の病気が引き起こされたのでは意味がない。血圧降下剤がどのようなものか。いちばんよく処方されているのは利尿剤なのである。血圧が高くなるのは、血管を通る血液の量が多すぎるためである。手っ取り早く血圧を下げるには、体内の水分を外に出して血液量を減らせばいい。だから利尿剤によって尿(水分)の排泄量をふやしてやろうという、なんとも姑息な方法がとられているのである」
   この本が書かれたころは、利尿作用のある血圧降下剤が主流だったようですが、最近は、AU拮抗剤(カルシウム拮抗剤)が主流だそうです。副作用が少ないと言われていますが、三石先生はそのことにも触れています。
   「これは、血管を取り巻いている平滑筋を含め、あらゆる筋肉には、カルシウムイオンが入ると収縮するというメカニズムがあります。よってカルシウムと拮抗する薬を服用すれば、平滑筋の収縮力が弱まって血圧が下がるわけ。これは副作用が少ないと言われているが、この薬にしても、血圧に関係する筋肉だけを選んで作用するわけではない。服用すれば、他の筋肉も同時に収縮力が弱まることになる」
   なんとも怖い事実ではないでしょうか。
   さらに先生は、コレステロールにいたっては、体に必要不可欠な物質だといいます。細胞を作る成分であり、足りないとガン化しやすく、骨がもろくなりやすいとか。「必要不可欠なのが、成人病の原因としか思われていない。患者にこのような偏った情報しか与えない医者は、無責任だ。さらに善玉、悪玉にわけることは極めて危険。どちらにも体に大事な役割がある」
   そして、やはり、コレステロール降下剤という薬の危険性について「コレステロール降下剤は胆石を作る」と言います。
   そして最後に紹介するのは糖尿病についてです。体内でインシュリンが作られなくなり発症する糖尿病。「インシュリンというのは、血液中のブドウ糖を脂肪細胞や筋肉細胞に押し込む働きがある。だからインシュリンが足りないと細胞に押し込まれないブドウ糖が血液中に残ってしまい血糖値が高くなる。医者が減量を求めるのはこのためだ。しかし、カロリー制限によって血糖値が下がったとしても、食事の量全体を減らしているため、カロリーだけではなくタンパク質やビタミンなどの必要な栄養も低下している可能性が高い。たいていの医者は血糖値を下げることが糖尿病の治療の目的だと思っている」
   しかし、三石先生は、それは、糖尿病のひとつの手段でしかない、と言います。大事なのは、糖尿病がどんな悪さをするのかを知ることだと。それさえわかれば、血液中にブドウ糖が多くなって糖尿病と診断されても痛くもかゆくもないと言います。
   「ブドウ糖の中には変形してタンパク質とくっつこうとする性質を持ったものが時々、混じってしまう。くっつくとタンパク質は本来の働きができず、なかでもSODと呼ばれる活性酸素除去酵素の動きが封じられる。さらにブドウ糖にくっつかれたSODは壊れるときに自身で強い活性酸素を発生させてしまう。そのために糖尿病になると体内で活性酸素が大暴れし、網膜症、腎症、神経障害といった合併症を惹き起こすことになる。これらの合併症こそが糖尿病の怖さである。だから血糖値を下げることが目的ではなく、下がらなくても活性酸素を除去する対策を講じれば、糖尿病を克服したのと同じことになるわけだ」
   これも丹羽先生が常日頃、言っていることと同じでした。三石先生はSODを始めとする抗活性酸素剤はがんを予防する強力なパワーさえ持っていると言います。人間が摂取できるものでは、人参、かぼちゃ、トマトといった緑黄色野菜のほか、柑橘類、海藻、鶏や魚の卵、ゴマ、緑茶、赤ワインなどがいいと。
   とにかく、糖尿病の治療は血糖値を下げることが目的ではない、ということばはこの本のタイトルをいちばん物語っています。ほかにも、関節炎、骨粗鬆症にはカルシウムよりもまず良質のタンパク質がいい、とかリウマチの痛みは抗活性
酸素剤(SODなど)で消える、貧血には鉄分よりタンパク質、痛風にはビタミンAがいい、といった項目が並びます。いずれも、医者の知らない栄養学、分子生物学の観点から検証した科学的根拠のあるお話しばかり。さらに、今の医学で病気は予防できない、栄養学の導入なしに医学の近代化はない、人間ドックに入ると健康な人でも病気にされてしまう、とも言います。これも丹羽先生や、たびたび紹介してきた中村先生や近藤先生たちのお話とぴったり符号します。
 
   この本を読んで、現代の医学は、MRIや内視鏡などのハードの分部の進化と、副作用と離れられない薬の研究に費やされたもののような気がしてきました。そして、それは、決して人を健康にする、元気にするものではないのではないかと感じました。文庫として手軽に読めるので、ぜひご覧になってください。 
 

 


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