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『がん難民コーディネーター』 〜かくして患者たちは生還した〜
藤野邦夫

 

 
   自らが望む治療を受けられない「がん難民」は、全国で75万人にものぼるといわれています。ここに今回ご紹介する本「がん難民コーディネーター かくして患者たちは生還した」の著者、藤野邦夫さんは、そんな患者さんたちの相談にのり、医者や病院の紹介を無償で行っています。先日、テレビ朝日の『報道ステーション』で大きく紹介されました。本の最後には、代替医療の先駆者として丹羽先生とも親交があり、互いを認め合う帯津良一(帯津三敬病院名誉会長)先生との対談も掲載され、これからのがん医療と患者のあり方がはっきりと見えてきます。
   藤野さんがこれまでに相談に乗った患者さんの数は200人を越し、自身も5年前にがん宣言され、お母さん、妹さん、弟さんをがんで亡くされています。
   「がん難民」とは、標準治療で治る見込みがなく、病院から追い出されてしまった患者さんのことです。そんな患者さんたちの行き場はホスピスか自宅しかなく、ホスピスは、緩和治療を行う場で、積極的な治療を行ってもらえないことから、患者さんは、もう終わりという気持ちになってしまうそうです。本書の中でも「病院としては治らない患者≠追い出し治る患者≠セけをおいて、病院の治癒実績を挙げたいという思惑もあるように思う」
   と言い、実際に厚生労働省のデータに「年間入院患者数」と「院内患者死亡数」から計算すると、日本のがん医療の中心である国立中央がんセンターの場合、院内死亡比率はわずか3.35%にすぎません。これは他のがんセンターの2分の1から3分の1以下という低さです。
   「この低さには、治療水準が高いだけというのではなく治る患者だけをおいている≠ニいう事情がからんでいるのでは。国立系の病院には一人でも多くの患者を治すことが求められていることは確かだろう。その一方でがん難民を最も多く出しているのではないか≠ニいう批判もある」
   事実、追い出されて藤野さんに相談に来る患者さんのなかに国立系の病院で治療を受けていた人たちが多いそうです。
   多忙を極め勉強不足から新しい治療法を知らない医師などに命をゆだねなければならない患者さん。藤野さんはそのような「がん難民」の方々と、医療とのパイプとしてこのコーディネーターとしての活動を始められたそうです。
   本の中で藤野さんは手術偏重の今の日本のがん治療についても触れられています。「日本のがん治療の実態は、手術に偏っているのが実態。なぜなら、現場でがん治療にあたっている医師の多くが、かつて大学の医学部で教育を受けていた頃は、がん治療といえば手術、という考え方が常識だったからです。そして、臨床の現場に出ると新しい治療法について学ぶ時間的余裕もないので、彼らは学生時代に得た知識どおりに治療に当たっていることが少なくない。また、日本のがん治療は長年手術中心に行ってきたため、放射線外科医等に比べて外科医の力が圧倒的に強く、放射線治療などを提案しようものなら、それこそ医師の間で邪道扱いされかねなかったのだ」
   加えて外科医が日々進化し、オーダーメイド化している抗がん剤を使いこなせるのか疑問を呈しています。
   さらに、さまざまな治療法を提案しながらも、「抗がん剤を使い続ければいつかは効かなくなる時が来る。いつまでも薬を使い続けるわけにもいかない。手術にしても、がんが進行していれば適用できないし、放射線も万能ではない。このように従来の手術、放射線治療、化学療法≠ニいう西洋医学の治療法には明白な限界がある。これは西洋医学の権威も認めざるをえない事実に他ならない。では世界の医療界はどのような方法で限界を打ち破ろうとしているのか。西洋医学の牙城のひとつ、フランスのキューリー研究所のエルヴェ・フリードマン所長は21世紀のがん医療の中心は免疫療法になるしかない≠ニ述べている」
   ところが先進国の中で日本ほど免疫療法を軽視する国はないそうです。これは丹羽先生が常日頃おっしゃっていることと符号することです。
   とどのつまり、このような状況だから、がん患者とその家族は、出来るだけ多くの情報を収集し、判断力を養わなければがんと戦えないと言います。
   「あいまいなことを言う病院や、検査しても分からない、手の打ちようがないという病院にはさっさと見切りをつけて、治せるという病院を探すようにしたい。世の中はおもしろいもので、どこかに適切な方法を提案してくれる病院があり、医師がいる。それを探り当てるのはやはり情報である」
   まもなく二人に一人ががん患者になるといわれています。これからの備えのためにも、おすすめの一冊でしょう。
 

 


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