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『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』 〜お酒、油ものもOK〜
江部康二 高雄病院理事長

 

 
   検査は空腹時ではなく食後に
 
   これまで糖尿病と言えば、量が少なく、味気ない食事。塩分、脂分を極力控えた清進料理のような菜食しか食べられませんでした。人間から食べるという楽しみを奪ってしまうのが糖尿病患者のいちばんの悩みでした。
   そんな糖尿病患者に朗報をもたらしてくれたのが、今回紹介する江部先生が書かれた本です。先生は、カロリー制限をあまり厳しく行わない「糖質制限食」と題した独自の食事方法で、糖尿病患者に大きな効果を上げているのです。
   その帯に書かれている効果のほどを紹介しると、
 ○実践した患者全員が劇的に改善
 ○薬剤に頼らないようになる
 ○インスリン注射を中止できた例も
 ○欧米もカロリー制限から糖質制限へ
 ○糖質を虎投げれば、膵臓は休める
 ○空腹時血糖では意味がない、食後高血糖こそ危険
 ○健康診断では見逃されやすい食後高血糖
 ○脂肪をたくさん摂っても食後血糖は上がらない
 ○人は穀物抜きでも生きていける
 ○現代人は糖質の取り過ぎで脂肪が燃えにくい
 ○糖質制限食では酒を飲んでも大丈夫
   と、これだけの見出しを見てもこれまでの常識とは大きく異なることばかりです。
 
   糖尿病は現代病と言われるように、今世紀に入ってから急に増えてきた病気です。厚生労働省の調べでは、日本人の1,400万人が糖尿病、あるいはその予備軍だといいます。つまり、現代人の10人ひひとりは糖尿病だということです。しかし、周囲を見回しても、そんなに糖尿病患者がいるとは思えないと思っていませんか?
   確かに、通院して投薬治療をしている糖尿病患者は300万人で、推測の5分の1です。残りの1,000万人以上はどこへ行ったのかというと、実は、自分の糖尿病に気づかずにいるのです。
   糖尿病は発見が遅れやすいといいます。会社などで定期的に健康診断をしていて、どこも悪くないから大丈夫、というのが落とし穴なのです。
   江部先生は言います。
「会社などで行う集団の検診では糖尿病の初期段階のものはほとんど発見できないからです。集団で検診の場合、検診の朝には空腹の状態で行います。これは胃の検査なども行うのでどうしても胃が空っぽでないといけないわけです。ところが糖尿病の発見という面で言えば、空腹時に血糖値を調べて血糖値が高いということは、もうすでにかなり進んでしまった糖尿病ということになるのです。その前の段階を発見するのには食後の血糖値を調べる必要があるのです」
 
   すでに欧米では主流の療法
 
   そもそも糖尿病というのは、血糖値が異常に高くなる病気です。普通は、血液中の糖分は膵臓で作られるインスリンによって体の細胞に送られ、エネルギーや脂肪などになるのですが、その膵臓の働き悪かったり、インスリンの量が減ったりとすると、血液中に糖分はあふれているのに、体内にエネルギーが運ばれなくなってしまうのです。
   だから糖尿病になると、まずは血糖値を下げるために食事療法を行うわけですが、従来は、総カロリーと脂肪の摂取量に制限をもうけ、低カロリー、低脂肪を基本方針としてきました。
「糖質制限食では、カロリーや脂肪の量を制限するのではなく、糖質を制限することを基本としています。なぜなら、血糖値を上昇させるのはほぼ糖質(炭水化物)だけだからです。タンパク質や脂肪も糖質には変換されますが、その速度はきわめて遅く、血糖値を上げる要因としてはあまり問題にならないからです」
   という江部先生の食事療法の基本は
 1 ご飯やパンなどの主食やいも類など、糖質の多い食品はほとんど摂らない。
 2 肉や魚、油ものなど、脂肪分やタンパク質の多い食品は好きなだけ食べてもいい。
   つまり、主食を食べないで、代わりに炭水化物を含まないおかずばかりを食べることで糖尿病をコントロールしようというものなのです。加えて糖質が少ない焼酎やウイスキーなどの蒸留酒は適量なら飲んでいいというのです。
   この食事療法で、これまでよりもはるかに効果が大きく、効き目が早く表れるといいます。100近い症例の全員に劇的な改善が見れたそうです。
   そんな先生の本には、食べてもいいもの、注意が必要なものが細かく記されています。さらに1週間の献立メニューも紹介されています。だれもこれまでの常識ではタブーとされてきた豚肉からマヨネーズやチーズまで盛りだくさん。糖尿病の患者さんでなくても普通の人が満腹感を得られるようなメニューなのです。糖尿病でなくても運動不足で太り気味の人にもおすすめです。
   この療法は欧米ではすでに主流となりつつあり、日本でも近い将来そうなるといいます。
 
   ご注意
※糖質制限食は開始直後から効果があるため、経口血糖値降下剤内服やインスリン注射をしている人は低血糖発作を起こす可能性があります。そうした方は、必ず医師と相談し、できれば入院して糖質制限を行ってください。また、腎機能の悪い人には糖質制限食は適していませんのでご注意ください。
 

 


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